【法改正 令和6年4月】高年齢雇用継続給付

高年齢雇用継続給付 改正
目次

高年齢雇用継続給付の最大給付率が10%に引き下げ

雇用保険法等の一部を改正する法律により、高年齢雇用継続給付の最大給付率が15%から10%に引き下げられます。60歳以降の収入減少を補う目的の高年齢雇用継続給付ですが、2025年から段階的に引き下げられ最終的に廃止されます。2025年4月1日に施行される改正部分を解説していきますが、特別支給の老齢厚生年金等を受給している方も影響がありますので要チェックです。

改正条文を見てみよう

雇用保険法 第61条5項(高年齢雇用継続給付)
高年齢雇用継続基本給付金の額は、一支給対象月について、次の各号に掲げる区分に応じ、当該支給対象月に支払われた賃金の額に当該各号に定める率を乗じて得た額とする。ただし、その額に当該賃金の額を加えて得た額が支給限度額を超えるときは、支給限度額から当該賃金の額を減じて得た額とする。
現行2025年4月1日以後
一 当該賃金の額が、みなし賃金日額30を乗じて得た額の100分の61に相当する額未満であるとき 100分の15
二 前号に該当しないとき みなし賃金日額に30を乗じて得た額に対する当該賃金の額の割合が逓増する程度に応じ、100分の15から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率
一 当該賃金の額が、みなし賃金日額30を乗じて得た額の100分の64に相当する額未満であるとき 100分の10
二 前号に該当しないとき みなし賃金日額に30を乗じて得た額に対する当該賃金の額の割合が逓増する程度に応じ、100分の10から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率
新旧対照表

高年齢雇用継続給付は、離職せずに(基本手当を受給せず)継続して働く人を対象とした「高年齢雇用継続基本給付金」と、離職して基本手当を受給した人を対象とする「高年齢再就職給付金」がありますが、高年齢再就職給付金について額は準用されていますので、ここでは割愛します。

改正されたのは給付率

高年齢雇用継続給付は、60歳に達した日以後安定した職業に就くことにより被保険者となった場合、支給対象月に支払われた賃金の額が、当該基本手当の日額の算定の基礎となった賃金日額に30を乗じて得た額の100分の75に相当する額を下るに至ったときに一定の額が給付される可能性がある制度です。

現行の最大給付率は、実際支払われた賃金の15%で賃金が61%以下まで低下した場合ですが、改正後は賃金が64%以下まで低下した場合、実際支払われた賃金の10%の給付に縮小されます。

引用:厚生労働省

高年齢雇用継続給付の具体的な廃止年は決まっていませんが、段階的に縮小されていきます。

高年齢雇用継続給付について|職業安定分科会雇用保険部会(第188回)

高年齢雇用継続給付

支給要件を確認

高年齢雇用継続基本給付金の要件に改正はありません

  • 一般被保険者または高年齢被保険者であること
  • 60歳に達した日を離職日とみなして算定した算定基礎期間に相当する期間が5年以上あること
  • その月の初日から末日まで引き続き被保険者であること
  • その月の初日から末日まで引き続き介護休業給付金又は育児休業給付金の支給を受けることができる休業をしなかったこと

支給対象月は、60歳に達した日の属する月から65歳に達した日の属する月までです。雇用保険法では65歳に達すると「高年齢被保険者」となりますので、高年齢被保険者となった1月だけ支給の対象となります。

算定基礎期間とは「被保険者であった期間」のことで、5年以上ないと支給されません。60歳に達した時に5年に満たない場合は、5年以上に至ったときに支給対象者となります。
「被保険者であった期間」は、途中で離職した場合でも離職日から1年以内に再就職し雇用保険の被保険者となれば通算します。ただし基本手当を受給したり離職日から1年を超えて再就職した場合は、リセットされます。

暦月の初日から末日まで雇用保険の被保険者であることが要件なので、月の途中で退職した場合は、その月は支給対象外となります。

暦月の初日から末日まで育児や介護で休業していた場合は、その月は支給対象外です。

 

支給限度額と最低限度額

令和6年8月1日から支給限度額が変更が変更になっています。

支給限度額

支給対象月に支払いを受けた賃金の額が376,750円以上であるときには、高年齢雇用継続給付は支給されません。

最低限度額

高年齢雇用継続給付として算定された額が、2,295円を超えない場合は、支給されません。

厚生労働省 高年齢雇用継続給付、介護休業給付、育児休業給付の支給限度額の変更

 

老齢厚生年金との調整

雇用保険法の改正に伴い、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者である場合で、高年齢雇用継続給付の支給対象月の標準報酬月額が、60歳到達時のみなし賃金日額に30を乗じて得た額の64%未満であるときは、標準報酬月額4%に相当する老齢厚生年金が支給停止されることになります。

高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金との調整

高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金の調整は、最大15%支給されて6%停止と記憶している方も多いと思いますが、改正後は最大10%支給されて4%停止となります。

働いている(在職中)間に受給する老齢厚生年金は、在職老齢年金の仕組みより一部又は全額が支給停止されますが、あわせて高年齢雇用継続給付を受給する場合は、高年齢雇用継続給付の 4 割相当の老齢厚生年金が支給停止となります。

高年齢雇用継続給付の 4 割相当」の老齢厚生年金が支給停止というルールに変更はありませんので、現行の最大給付率15%に対して4割(40%)の6%が支給停止。改正後は、最大給付率10%に対して4割(40%)の4%が支給停止になるということです。

高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金の調整
現行改正後
最大給付率15%✕4割=6%支給停止最大給付率10%✕4割=4%支給停止

 

本来の老齢厚生年金は65歳に達したときに受給権を得ますが、高年齢雇用継続給付の支給対象月は、60歳に達した日の属する月から、65歳に達した日の属する月までです。つまりこの高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金の調整の対象者は、特別支給の老齢厚生年金又は繰上げ支給の老齢厚生年金を受給されている方になります。

ポイント

標準報酬月額が、みなし賃金月額の75%以上あるときや、在職老齢年金の仕組みにより老齢厚生年金が全額支給停止になるときは、高年齢雇用継続給付との支給調整は行われません

改正後は高年齢雇用継続給付は支給対象月の「賃金」が、みなし賃金月額の64%以下に低下したときに「賃金」の10%が支給されます。老齢厚生年金との支給調整は「標準報酬月額」が、みなし賃金月額の64%未満に低下したときに「標準報酬月額」の4%が支給停止されます。この対応関係は事例問題で重要になりますので言葉や定義も含めて抑えましょう。

 

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