最低賃金とは?
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。
労使間で最低賃金額より低い額で合意があったとしても、その部分については無効になります。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなされます。
わが鹿児島県は、前年比56円UP10月5日から953円となり、上げ幅としては過去最大です。
最低賃金は、社会保険労務士試験の「労働に関する一般常識」で出題されます。その重要論点について触れていこうとおもいます。
目的条文を見てみよう
この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
平成24年の選択式では「国民経済の健全な発展に寄与する」が抜かれました。他の重要なワードについて厚生労働省の見解を見てみましょう。
「労働条件の改善」
労働基準法では「労働条件の向上」といっているが、向上とは現状より上回るということであって、現状が既に高水準の場合でも現状より更に上回れば向上である。改善とは現状が悪いことを前提としている。賃金の低廉な労働者の賃金の上昇を図るということはまさに改善であって向上よりも適切な表現である。
「労働力の質的向上」
最低賃金制の実施は、下記の理由によって、「労働力の質的向上」、すなわち労働能力のすぐれた労働者を確保することに役立つものと考えられる。
- 賃金の上昇によって、優秀な労働者を雇い入れることが容易になること。
- 労働者の生活が安定することによって、労働能率の増進がもたらされること。
- 労働者の収入の増加によって、労働人口中家計補充的な不完全就業者が減少すること。
「事業の公正な競争」
最低賃金制の実施は、「事業の公正な競争の確保」、すなわち、賃金の不当な切下げ又は製品の買叩き等を防止することによって、事業間の過当競争を排除することができ、また、最低賃金制の実施による企業の合理化は事業間の公正競争を促進するものと考えられる。
適用される労働者は?
最低賃金は雇用形態に関係なく、すべての労働者に適用されます。
地域別最低賃金は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されますので、原則、最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。
最低賃金の減額の特例
使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により最低賃金額の規定を適用するとしています。(第7条)
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
賃金の単位は?
最低賃金額(最低賃金において定める賃金の額をいう)は、時間によって定めるものとする。
原則、時間給に換算して計算します。
- 時間給の場合
そのまま時給 - 日給の場合
日給÷1日の所定労働時間 - 月給の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間 - 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額
最低賃金の対象とならない賃金
次に掲げる賃金は、最低賃金を計算する場合、賃金に算入しません。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
地域別最低賃金の決定
厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない。
2 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつた場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。
厚生労働省に中央最低賃金審議会が、都道府県労働局に地方最低賃金審議会が置かれています。
最低賃金は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会において議論の上、都道府県労働局長が決定します。
派遣労働者の最低賃金は派遣元?派遣先?
労働者派遣法に規定する派遣中の労働者については、その派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額により最低賃金額の規定を適用するとされています。(第13条)
派遣労働者の賃金支払い義務は派遣元ですが、地域別最低賃金については、「派遣先の事業場の所在地」を含む地域について決定された地域別最低賃金が適用されます。
最低賃金は2種類存在する
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度である。仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされる。したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはならない。また、地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合については、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められており、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金を支払わない場合については、【労働基準法】の罰則(30万円以下の罰金)が科せられる。
なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者、試の使用期間中の者等については、使用者が【都道府県労働局長】の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められている。
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」があります。地域別最低賃金違反は最低賃金法の罰則で50万円以下の罰金が科されますが、特定(産業別)最低賃金は「労働基準法」で罰則が科されます。これについては後で説明します。先に2種類の最低賃金について説明します。
地域別最低賃金
賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
2 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
3 前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。
地域別最低賃金は、あまねく全国各地域について、つまり各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。地域別最低賃金で働いた場合の実質的な収入が、生活保護費の給付水準を下回る逆転現象が起きないように生活保護に係る施策との整合性に配慮するとされています。
特定(産業別)最低賃金
特定(産業別)最低賃金は、特定の産業について設定されている最低賃金のことで「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について定められています。関係労使の申出に基づき最低賃金審議会の調査審議を経て、設定されています。
「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金がポイントです。つまり最低賃金法が定める地域別最低賃金を上回っているけど特定(産業別)最低賃金を下回っている。この場合、地域別最低賃金を上回っていますので、最低賃金法の罰則は適用されません。どうやって罰するのかというと・・・
労働基準法第24条(全額払いの原則)を適用します。なお、特定(産業別)最低賃金の適用を受ける労働者に対して、地域別最低賃金に定める金額未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金法上の罰則が適用されます。
最低賃金は、周知義務があります。第8条「最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない。」30万円以下の罰金が科されます。長州力のポスター掲示してみたい方は以下からダウンロードできますのでいかがですか?
厚生労働省:最低賃金広報ツール
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