【厚生年金保険法】事後重症・基準障害・併合認定・併合改定

目次

事後重症による障害厚生年金

受験生の誰もがゴチャゴチャ混ざる事後重症と基準障害、併合認定、併合改定(その他障害)について整理していきます。まずは事後重症から

条文を見てみよう

第47条の2(事後重症による障害厚生年金)

疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であった者であって、障害認定日において障害等級(1級、2級又は3級)に該当する程度の障害の状態になかったものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に同条第1項の障害厚生年金の支給を請求することができる。

 前条第一項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。

 第一項の請求があつたときは、その請求をした者に同項の障害厚生年金を支給する。

事後重症とは障害認定日に障害は残ったが障害等級1,2,3級)に該当しなかった者が65歳に達する日の前日までに、障害等級に該当したらその期間内に請求が出来る規定です。

障害認定日に障害等級に該当してなくても65歳までに重くなったら支給されるんですね。重要論点は

  • 65歳に達する日の前日
  • その期間内に請求
  • 請求があったら障害厚生年金を支給する

65歳に達する日前日までに障害が悪化して障害等級(1,2,3級)に該当し「その期間内」に請求すること。つまり障害等級に該当するのも請求するのも65歳に達する日前日までじゃないといけません。「請求があったら障害厚生年金を支給する」の支給するとは請求によって受給権が発生することを意味しており、さかのぼって支給されることはありません。


繰上げ支給の老齢年金を請求したら?

繰上げ支給(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の受給権者になったら65歳に到達したものとみなされて事後重症の請求はできなくなります。

  • 初診日において被保険者であること
  • 初診日の前日に於いて初診日の属する月の前々月までの保険料納付要件を満たしていること
  • 障害認定日に障害等級に該当していない
  • 65歳到達日の前日までに障害等級に該当し、請求すること
  • 請求したら受給権が発生し請求があった月の翌月から支給が開始
  • 繰上げしたら請求できない

基準障害による障害厚生年金

障害認定日に障害は残ったが1級または2級に該当しない状態にある者が新たな傷病(基準傷病)にかかり既存の障害と併せて初めて1級または2級になった場合は障害厚生年金が支給されます。

条文を見てみよう

第47条の3(基準障害による障害厚生年金)

疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(以下この条において「基準傷病」という。)に係る初診日において被保険者であつた者であつて、基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準傷病による障害(以下この条において「基準障害」という。)と他の障害とを併合して障害等級の1級又は2級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたとき(基準傷病の初診日が、基準傷病以外の傷病(基準傷病以外の傷病が2以上ある場合は、基準傷病以外のすべての傷病)に係る初診日以降であるときに限る。)は、その者に基準障害と他の障害とを併合した障害の程度による障害厚生年金を支給する。

条文を読み解くと先発の障害が障害等級1級または2級に該当せず、その後、新たな障害(等級不問)が発生し65歳到達日の前日までに後発の障害認定日以後、併せて初めて1級または2級に該当したら障害厚生年金を支給するとなっています。3級がないのが重要ですね。ゆえに基準障害は「初めて1級2級」と言われています。併合して初めて1級2級になる原因となる後発の障害のことを基準障害といい、先発の障害は2以上(複数)あっても構いません。

事後重症と同じで65歳に達する日の前日までに併合して初めて1級または2級に該当しなければなりませんが、条文には「請求」の言葉はなく「障害厚生年金を支給する」と書いてあります。つまり請求しなくても受給権は発生すると言うわけです。請求は65歳以後でも大丈夫となります。(請求しないと支給は開始されません)

初診日要件保険料納付要件基準傷病(後発の障害)についてのみ問われます。


繰上げ支給の老齢年金を請求したら?

繰上げ支給(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の受給権者になったら65歳に到達したものとみなされて基準障害の障害厚生年金は支給されません。

  • 基準傷病(後発)の初診日に於いて被保険者。つまり既存の他の障害に於いては初診日に被保険者でなくても良い
  • 基準傷病(後発)の初診日前日に於いて初診日の属する月の前々月までの保険料納付要件を満たしていること。既存の他の障害に於いては納付要件は問わない
  • 65歳到達日の前日までに先発の既存障害と基準傷病(後発)を併合して初めて1級または2級に該当したら受給権が発生(請求は65歳以後でもかまわない)
  • 請求があった月の翌月から支給が開始
  • 繰上げしたら基準障害による障害厚生年金は支給しない

併合認定

障害厚生年金の1級または2級の受給権者に対して、さらに1級または2級の障害厚生年金を支給すべき事由が発生したら、前後の障害を併合した程度の障害厚生年金が支給されます。

条文を見てみよう

第48条(障害厚生年金の併給の調整)

障害厚生年金(その権利を取得した当時から引き続き障害等級の1級又は2級に該当しない程度の障害の状態にある受給権者に係るものを除く。)の受給権者に対して更に障害厚生年金を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金を支給する。

 障害厚生年金の受給権者が前項の規定により前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金の受給権を取得したときは、従前の障害厚生年金の受給権は、消滅する。

併合認定の重要論点は先発の等級も後発の等級も1級または2級に限られていること、そして併合認定されたら従前(先発)の受給権は消滅することです。注意点としては受給権取得当時1級または2級に該当していれば良く、軽減して3級に改定され又は3級すら不該当となり停止されていても併合認定の対象となることです。また受給権取得当時3級でも、その後悪化し1級または2級に該当したのも対象となります。つまり、一度も1級または2級に該当した事が無い3級の受給権者は対象外となります。

重要論点その2、年齢は不問となること。条文に年齢が書いてありません。つまり要件を満たせば年齢に関係なく併合認定されます。また既に受給権者であるため保険料納付要件も問われません。


先発の障害厚生年金が支給停止の場合

期間を定めて支給が停止されている1級または2級の障害厚生年金の受給権者に対して、更に1級または2級の障害厚生年金を支給する事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金は、従前の障害厚生年金を停止すべきであった期間、その支給を停止するものとし、その間、その者に従前の障害を併合しない障害の程度による障害厚生年金を支給する。

併合認定された障害厚生年金は、先発の障害厚生年金の支給停止期間が終了した時点から支給開始

後発の障害厚生年金が支給停止の場合

1級または2級の障害厚生年金の受給権者が更に1級または2級の障害厚生年金の受給権を取得した場合において、新たに取得した障害厚生年金が労働基準法の規定による障害補償を受けることができるために、その支給を停止すべきものであるときは、その停止すべき期間、その者に対して従前の障害厚生年金を支給する。

併合認定された障害厚生年金は、後発の障害厚生年金の支給停止期間が終了した時点から支給開始

  • 先発の障害も後発の障害も1級または2級に限られる(受給権取得当時に1級または2級に該当していれば軽減して3級または不該当で停止になっていても良い)
  • 年齢を問わない
  • 併合認定すべき事由が発生したが先発または後発のいずれか一方が期間を定めて停止されている場合、その間、他方の障害厚生年金のみが支給される

併合改定(その他障害による額の改定)

障害厚生年金の1級または2級の受給権者に対して、さらに3級以下の障害(その他障害)の状態になった場合、先発の障害厚生年金とその他障害と併合し増進したときは額の改定請求ができます。

条文を見てみよう

第52条4項(年金額の改定)

障害厚生年金(その権利を取得した当時から引き続き障害等級の1級又は2級に該当しない程度の障害の状態にある受給権者に係るものを除く)の受給権者であって、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(当該障害厚生年金の支給事由となった障害に係る傷病の初診日後に初診日があるものに限る)に係る当該初診日において被保険者であったものが、当該傷病により障害(障害等級1級又は2級に該当しない程度のものに限る、「その他障害」という)の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害厚生年金の支給事由となった障害とその他障害(その他障害が2以上ある場合は、全てのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が当該障害厚生年金の支給事由となった障害の程度より増進したときは、その者は、実施機関に対し、その期間内に障害厚生年金の額の改定を請求することができる。

障害厚生年金(2級以上)の受給権者に、その他障害(3級以下)が発生し、障害厚生年金の障害とその他障害の障害を併合した障害が、障害厚生年金の障害より増進した場合、年金額の改定の請求ができます。併合認定と似ていますが併合認定は先発も後発も2級以上で、併合改定(その他障害)は先発が2級以上後発が3級以下です。
先発の障害は受給権取得当時1級または2級に該当していれば良く、軽減して3級に改定され又は3級不該当となり停止されていても大丈夫です。その他障害が発生し65歳に達する日の前日までに先発の障害と併合して2級以上にならないと額の改定請求は出来ません。また「その他障害」は初診日要件と保険料納付要件を満たす必要があります。
繰上げ支給(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の受給権者になったら65歳に到達したものとみなされて併合改定(その他障害)による額の改定請求は出来ません。
障害厚生年金の額が改定されたら、改定が行われた日の属する月の翌月から支給が開始されます。


横断して整理しよう

スクロールできます
先発障害その後(後発)年齢
事後重症等級不該当
(初診日要件)
(納付要件)
2級以上
(悪化)
65歳前に該当
65歳前に請求
基準障害等級不該当等級不問
(初診日要件)
(納付要件)
65歳前に該当
請求不問
併合認定2級以上2級以上
(従前消滅)
不問
併合改定
(その他障害)
2級以上等級不該当65歳前に該当
65歳前に請求
※併合認定と併合改定の先発の障害等級は受給権を得ていれば良く軽減して不該当となり支給停止されていても可

 

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 大変よく分かりました。現状の相談受けても大丈夫なくらい具体的に書かれています。ありがとうございました。

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