【国民年金法】障害基礎年金の3要件

障害基礎年金とは?

障害基礎年金は、病気やけがで、生活や仕事が制限されるようになった場合に支給される可能性のある年金です。支給されるには要件を満たす必要があり、重要な論点です。

3つの要件

障害基礎年金が支給されるには次の3つの要件を満たさなければいけません。

  1. 初診日要件
  2. 障害認定日要件
  3. 保険料納付要件


条文を見てみよう

第30条(支給要件

障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。

 被保険者であること。

 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること。

 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。


初診日要件

初診日要件から見ていきます。条文から読み取れる初診日要件は、

  • 初診日において、被保険者
  • 初診日において、被保険者であった者で、日本国内に住所を有し60歳以上65歳未満

初診日とは、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいいます。初診日において被保険者は原則の条件ですね。国民年金法の第1号被保険者は60歳に達すると資格を喪失します。しかし「被保険者であったもので日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満」であれば初診日要件をみたせます。

なお、繰上げ支給の老齢基礎年金を請求してしまうと、65歳に達したとみなされるので、初診日要件を満たせなくなります。繰上げのデメリットのひとつです。

障害認定日要件

障害基礎年金が支給されるには、障害認定日において障害等級(1級、2級)に該当する程度の障害の状態にあることが必要です。障害認定日とは

  • 初診日から起算して1年6か月を経過した日
  • 上記期間内にその傷病が治った場合は、その治った日

治った日とは、症状が固定して治療の効果が期待できない状態を含みます。

初診日から起算して1年6か月経過した日に1級か2級の障害状態に該当する必要があります。また初診日から1年6か月経過するまでに症状が固定したら症状固定日の方が障害認定日となります。

障害の程度を認定する場合の基準は、国年令別表、厚年令別表第1及び厚年令別表第2に規定されていて、その障害の状態の基本が示されています。

1級は「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。」

2級は「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。」

3級は「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。」

なお、精神の障害も障害基礎年金の対象になります。

障害認定日に、障害等級(1級、2級)に該当する程度の障害の状態になかったら、事後重症に該当する可能性があります。事後重症とは、障害認定日障害等級1,2級)に該当しなかった者が、65歳に達する日の前日までに、障害等級に該当したらその期間内に請求が出来る規定です。

事後重症についての記事はこちら↓


保険料納付要件

障害基礎年金が支給されるには、初診日の前日において初診日の前々月までに、被保険者期間があるときは当該被保険者期間に係る保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上なければいけません。

「初診日の前日において初診日の前々月

なぜ初診日前日なのか?

それは初診日に保険料を駆け込み納付する不正を排除しているからです。なので初診日の前日

なぜ初診日前々日なのか?

保険料の納付は翌月末日が納期限です。例えば4月1日が初診日だったとすれば、前々月(2月)の保険料は3月31日が納期限となります。よって前々月までの保険料納付状況をみることになります。

前々月までに「国民年金の被保険者期間」があれば保険料納付要件を問われるので、「被保険者期間がない」のであれば保険料納付要件は問われません。例えば20歳になってすぐに初診日があるような傷病とか。

支給要件の特例

原則の保険料納付要件は「初診日の前日において初診日の前々月までに、被保険者期間があるときは当該被保険者期間に係る保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上必要」でした。

令和8年4月1日前にある傷病については、保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上に満たないときでも支給される特例があります。

昭和60年法附則20条1項(障害基礎年金等の支給要件の特例)

初診日が令和8年4月1日前にある傷病による障害について、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の「3分の2に満たないとき」とあるのは、「3分の2に満たないとき(当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間(当該初診日において被保険者でなかつた者については、当該初診日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの1年間)のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないときを除く。)」とする。ただし、当該障害に係る者が当該初診日において65歳以上であるときは、この限りでない。

条文が読み取りにくいですが、簡単にすると「保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がない」とは「未納(滞納)期間がない」という意味です。

つまり、初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間未納がなければ保険料納付要件を満たせるということになります。ただし書きも重要です。初診日において65歳以上に人には適用されません。

それでは過去問いきましょう

問1. 被保険者であった者が60歳以上65歳未満の間に傷病に係る初診日がある場合であって、当該初診日において、日本国内に住所を有しないときには、当該傷病についての障害基礎年金が支給されることはない。なお、当該傷病以外に傷病は有しないものとする。

過去問 平成29年 国民年金法

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問1. 〇 3つの要件のひとつ、初診日要件を聞いていますね。初診日要件は
・初診日において被保険者
・初診日において被保険者であったもので、日本国内に住所を有し、60歳以上65歳未満
ですね。設問の人は「初診日において被保険者であった者」ですので、日本国内居住と年齢(60歳以上65歳未満)を満たす必要があります。日本国内に住所を有しないので障害基礎年金が支給されることはありません。
なお、「初診日において被保険者」であれば、年齢も住所も問われません。

問2. 初診日から起算して、1年6か月を経過した日又はその期間後に傷病が治った場合は、その治った日を障害認定日とする。

過去問 平成24年 国民年金法

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問2. ✕ 障害認定日は、初診日から起算して1年6か月経過した日又は「その期間内」に傷病が治った日(症状が固定した場合を含む)の、いづれか早いほうです。

問3. 平成2年4月8日生まれの者が、20歳に達した平成22年4月から大学を卒業する平成25年3月まで学生納付特例の適用を受けていた。その者は、卒業後就職せず第1号被保険者のままでいたが、国民年金の保険料を滞納していた。その後この者が24歳の誕生日を初診日とする疾病にかかり、その障害認定日において障害等級2級の状態となった場合、障害基礎年金の受給権が発生する。

過去問 平成28年 国民年金法

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問3. 〇 設問の人は3つの要件のうち2つは満たしています。初診日において被保険者、障害認定日に、障害等級2級に該当。あとは、保険料納付要件を見ていきます。
初診日の前日(平成26年4月7日)において初診日の前々月(平成26年2月)までの被保険者期間は、平成22年4月から平成26年2月までです。被保険者期間3年11か月のうち学生納付特例期間が3年間あり、被保険者期間うち保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が3分の2以上ありますので保険料納付要件を満たします。

問4. 初診日において被保険者であり、障害認定日において障害等級に該当する程度の障害の状態にあるものであっても、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間がない者については、障害基礎年金は支給されない。

過去問 令和2年 国民年金法

←正解はこちら
問4. ✕ 保険料納付要件を問われています。条文を確認しましょう。
「初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。」
つまり、被保険者期間が「あれば」保険料納付要件を問われるし、設問のように被保険者期間が「ない者」については保険料納付要件は問われません。被保険者期間が無ければ保険料を納めてませんからね。
具体例としては、20歳に達した月に傷病にかかり障害認定日に1級、2級の障害の程度に該当した場合とかです。

問5. 障害基礎年金について、初診日が令和8年4月1日前にある場合は、当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間(当該初診日において被保険者でなかった者については、当該初診日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの1年間)に、保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がなければ保険料納付要件は満たされたものとされる。ただし、当該初診日において65歳未満であるときに限られる。

過去問 令和3年 国民年金法

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問5. 〇 支給要件の特例ですね。ポイントは「初診日が令和8年4月1日前」にある暫定措置であること、初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間に未納(滞納)が無い事、初診日において65歳未満であることです。

障害基礎年金の受給権が発生する、3つの要件は重要な論点です。とくに保険料納付要件は、しっかりと理解しましょう。障害の程度も見直しがあり「両眼の視力の和」から「良い方の眼の視力」による障害認定基準に変更されています。日本年金機構のHPを一読して障害の程度を確認するのも良いでしょう。

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