【国民年金法】障害基礎年金の額

目次

障害基礎年金の額は障害等級で決まる

障害等級1級780,900円×改定率×1.25
障害等級2級780,900円×改定率

障害等級2級は、老齢基礎年金の満額と同じ額で、障害等級1級は、障害等級2級の1.25倍です。

条文を見てみよう

第33条(年金額

障害基礎年金の額は、780,900円に改定率を乗じて得た額(その額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。)とする。

 障害の程度が障害等級の1級に該当する者に支給する障害基礎年金の額は、前項の規定にかかわらず、同項に定める額の100分の125に相当する額とする。

老齢基礎年金のように受給資格期間(10年以上)が必要とされず、保険料納付済期間が、短くても金額は老齢基礎年金の満額と同じ額が支給されます。障害等級が1級に該当する者には、1.25倍されます。

端数処理は、780,900円×改定率(100円未満四捨五入)に対して行い、1級の額には端数処理を行わない。780,900円 × 改定率の端数処理後の金額に1.25倍。

子に対する加算

障害基礎年金の受給権者にがいる場合は、加算が行われます。要件を条文で確認してみましょう。

第33条の2

障害基礎年金の額は、受給権者によつて生計を維持しているその者の18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満であつて障害等級に該当する障害の状態にある子に限る。)があるときは、前条の規定にかかわらず、同条に定める額にその子1人につきそれぞれ74,900円に改定率(第27条の3及び第27条の5の規定の適用がないものとして改定した改定率とする。以下同じ。)を乗じて得た額(そのうち2人までについては、それぞれ224,700円に改定率を乗じて得た額とし、それらの額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。)を加算した額とする。

 受給権者がその権利を取得した日の翌日以後にその者によつて生計を維持しているその者の子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満であつて障害等級に該当する障害の状態にある子に限る。)を有するに至つたことにより、前項の規定によりその額を加算することとなつたときは、当該子を有するに至つた日の属する月の翌月から、障害基礎年金の額を改定する。


子の加算が行われる要件

障害基礎年金の受給権者によって生計を維持されている18歳に到達したあとの3月31日までの、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にあるが加算の要件です。

2項にあるように、障害基礎年金の受給権を取得した翌日以後生計維持関係のある子を有することに至った場合も、子の加算が行われ障害基礎年金の額が改定されます。遺族基礎年金の生計維持関係は死亡の当時で判断されますので違いがありますね。

子の加算額

2人までは、1人につき224,700円×改定率
3人目以降は、1人につき74,900円×改定率

障害基礎年金には、子の加算がされるが、配偶者に係る加算は無い


子の加算は新規裁定者の改定率

老齢基礎年金や障害基礎年金等の額の計算で使われる「改定率」ですが新規裁定者既裁定者の2種類が存在します。より現役世代に近い67歳以下新規裁定者賃金変動をベースに改定率が決定し、68歳以上既裁定者物価変動をベースに改定率が決定します。

子の加算に使う改定率は、障害基礎年金の受給権者が67歳以下でも68歳以上でも「新規裁定者」の改定率で計算します。

条文第33条の2青文字第27条の3及び第27条の5の規定の適用がないものとして改定した改定率」は、既裁定者に適用する物価スライドを適用しないとう意味で、結果、新規裁定者に適用する賃金スライドが適用されます。

改定率・新規裁定者・既裁定者の詳しい説明は別の記事であげようと思います。

子が19歳で障害等級1級・2級に該当したら加算される?

障害基礎年金の子の加算は特徴的です。昔は子の生計維持関係は「障害基礎年金の受給権を得た当時」で問われていました。つまり受給権を得た後に子が生まれたり、結婚して子を授かっても子の加算は行われなかったんです。平成23年4月に「障害年金加算改善法」が施行され障害厚生年金の配偶者加算や障害基礎年金の子の加算制度を改正し、受給権者がその権利を取得した日の翌日以後でも生計維持があれば子の加算が行われるようになったんです。

老齢厚生年金遺族基礎年金にも子の加算制度がありますが、どちらも受給権を取得した当時で生計維持が問われます。つまり18歳年度末をむかえたら加算は終了し、19歳で障害状態(1,2級)になったとしても復活することはありません。

しかし、障害基礎年金の子の加算は、受給権を得た後でも、生計維持が認められれば子の加算が行われるので、18歳年度末で子の加算が終了しても、19歳で障害状態(1,2級)になれば、20歳まで子の加算が行われます。

障害基礎年金子が19歳で障害20歳まで
遺族基礎年金子が19歳で障害加算なし
老齢厚生年金子が19歳で障害加算なし
子の加算(障害等級1,2級)



加算額の改定(減額)

障害基礎年金の受給権を取得した翌日以後生計維持関係のある子を有することに至った場合は、子の加算が行われ障害基礎年金の額が増額改定されますが、子の加算額が減額改定されるときがあります。条文を見てみましょう。

第33条の2 3項

 第1項の規定によりその額が加算された障害基礎年金については、子のうちの1人又は2人以上が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、その該当するに至つた日の属する月の翌月から、その該当するに至つた子の数に応じて、年金額を改定する。

 死亡したとき。

 受給権者による生計維持の状態がやんだとき。

 婚姻をしたとき。

 受給権者の配偶者以外の者の養子となつたとき。

 離縁によつて、受給権者の子でなくなつたとき。

 18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。ただし、障害等級に該当する障害の状態にあるときを除く。

 障害等級に該当する障害の状態にある子について、その事情がやんだとき。ただし、その子が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるときを除く。

 20歳に達したとき。


子の加算は、当該子が要件を満たさなくなったら減額されます。対象となる子が死亡、生計維持の状態がやむ、婚姻等です。四号の「受給権者の配偶者以外の者の養子となったとき」とは?子を養子に出せば法律上、自分の子では無くなるので子の加算は無くなりますが、配偶者の養子になっても子の加算は続きます。よって「受給権者の配偶者以外の者の養子となったとき」という書き方になっています。

配偶者の養子だと減額改定されず、そのまま加算が続く

祖父や、兄弟など「配偶者以外」に養子にだすと、減額改定されます。

子が18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したときや、障害の状態(1級、2級)にある子が20歳に達すると加算がされなくなり減額改定されます。なお、障害状態(1級、2級)にある子は、自身が20歳に達すると20歳前傷病による障害基礎年金が支給されます。

具体例

45歳の障害基礎年金の受給権者(2級)であるAさんに、長男(17歳)、次男(15歳)、長女(10歳)がいたら、「780,900円×改定率」と、子の加算「224,700円×改定率」✕2、「74,900円×改定率」✕1が支給されます。長男が18歳となり3月31日の年度末を迎えたら、子の加算が「224,700円×改定率」✕2になり、加算額の改定が行われます。


年金額の改定

日本年金機構HPより

障害年金の額は、障害の程度によって異なります。そのため、障害の程度が重くなったときは、年金の額が増額されます。反対に軽くなったときは、年金の額が減額されるか支給停止されます。
 年金額の変更は、定期的に提出いただいた診断書で自動的に行いますが、障害の程度が重くなったときは、その旨を申し立てることもできます。日本年金機構HP


条文を見てみよう

第34条(障害の程度が変わつた場合の年金額の改定)

厚生労働大臣は、障害基礎年金の受給権者について、その障害の程度を診査し、その程度が従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認めるときは、障害基礎年金の額を改定することができる。

 障害基礎年金の受給権者は、厚生労働大臣に対し、障害の程度が増進したことによる障害基礎年金の額の改定を請求することができる。

 前項の請求は、障害基礎年金の受給権者の障害の程度が増進したことが明らかである場合として厚生労働省令で定める場合を除き、当該障害基礎年金の受給権を取得した日又は第1項の規定による厚生労働大臣の診査を受けた日から起算して1年を経過した日後でなければ行うことができない。

障害基礎年金は、障害認定日における障害の程度に応じて支給されますが、その後、障害の程度が増進又は軽減し障害等級が変更した場合は、年金額が改定されます。

  1. 厚生労働大臣が、障害の程度を診査し職権で額を改定できる
  2. 受給権者が、厚生労働大臣に額の改定の請求をできる

受給権者が厚生労働大臣に、請求する場合は「受給権を取得した日」または、「厚生労働大臣の診査を受けた日」から起算して1年を経過しないと行えません。1年を経過した日後とは、1年を経過した日の翌日ですので注意です。過去に問われています。(平成19年 国民年金法 問2 B)

ただし、省令で定められた障害の程度が増進したことが明らかである場合は、1年を経過する前でも請求できます。

「障害の程度が増進したことが明らかと確認できる場合」は国民年金法施行規則33条の2の2に定めてあります。

国民年金法施行規則33条の2の2

法第34条第3項に規定する厚生労働省令で定める場合は、障害基礎年金の受給権を取得した日又は同条第1項の規定による厚生労働大臣の診査を受けた日いずれか遅い日以後、次の各号に掲げるいずれかの状態に至つた場合とする。

 両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの(改正

 一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの

 ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/四視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/二視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの

 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの

 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの

 両上肢の全ての指を欠くもの

 両下肢を足関節以上で欠くもの

 四肢又は手指若しくは足指が完全麻痺したもの(脳血管障害又は脊髄の器質的な障害によるものについては、当該状態が6月を超えて継続している場合に限る。以下同じ。)

 心臓を移植したもの又は人工心臓(補助人工心臓を含む。以下同じ。)を装着したもの

 脳死状態(脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至つた状態をいう。以下同じ。)又は遷延性植物状態(意識障害により昏睡した状態にあることをいい、当該状態が3月を超えて継続している場合に限る。以下同じ。)となつたもの

十一 人工呼吸器を装着したもの(1月を超えて常時装着している場合に限る。)

令和2年の択一式で、こんな問題が出題されました。

障害等級2級の障害基礎年金の受給権を取得した日から起算して6か月を経過した日に人工心臓(補助人工心臓を含む。)を装着した場合には、障害の程度が増進したことが明らかな場合として年金額の改定の請求をすることができる。

過去問 平成30年 国民年金法

額改定請求は、受給権を取得した日から起算して1年を経過した日後でしかできませんが、障害の程度が増進したことが明らかである場合には、1年を待たずに行えます。

人工心臓(補助人工心臓を含む。)を装着は、障害の程度が増進したことが明らかである場合に該当しますので〇となります。

出題実績もあるので、おさえておいた方が良いかもしれません。

障害基礎年金の額が改定されたときは、改定後の額による障害基礎年金の支給は、改定が行われた日の属する月の翌月から支給されます。

それでは過去問いきましょう

問1. 令和3年度の給付額に関する次の記述は、正しいか。

障害等級1級の障害基礎年金の額(子の加算はないものとする。)は、障害等級2級の障害基礎年金の額を1.25倍した 976,125 円に端数処理を行った、976,100 円となる。

過去問 令和3年 国民年金法

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問1. ✕ 令和3年度の改定率が分かっていないと、解けない問題と思いきや、端数処理が分かっていると解ける問題です。障害等級1級の額は、780,900円に改定率を乗じた額に、50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げる端数処理を行い、1.25倍します。1.25倍した後に端数処理は行いません。令和3年度は前年度から-0.1%され改定率1となった年度で、新規裁定者も既裁定者も同じ780,900円と分かりやすい年でした。令和3年度の障害基礎年金1級の額は780,900円×1.25=976,125円となります。

問2. 障害基礎年金に係る子の加算は、受給権者が当該受給権を取得した時点において、その者によって生計を維持する18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にあるか、20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にある子がなければ、行われない。

過去問 平成23年 国民年金法

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問2. ✕ 障害基礎年金に係る子の加算は、「受給権者が当該受給権を取得した時点」で生計維持を問われない。平成23年4月に「障害年金加算改善法」が施行され障害厚生年金の配偶者加算や障害基礎年金の子の加算制度を改正し、「受給権者がその権利を取得した日の翌日以後」でも生計維持があれば子の加算が行われるようになりました。

問3. 障害基礎年金の受給権者の子についての加算額は、当該受給権者が再婚し、当該子がその再婚の相手の養子になったときは、加算額は減額される。

過去問 平成22年 国民年金法

←正解はこちら
問3. ✕ 障害基礎年金の受給権者の子についての加算額は「配偶者以外の養子」になったら減額されるが、配偶者の養子になっても引き続き加算は行われます。 

問4. 63歳のときに障害等級2級に該当する障害の程度による障害基礎年金の受給権を取得した者について、66歳のときにその障害の程度が増進した場合であっても、その者は障害基礎年金の額の改定を請求することはできない。

過去問 平成23年 国民年金法

←正解はこちら
問4. ✕ 障害の程度が増進した場合の障害基礎年金の額の改定を請求に年齢制限はありません。また、厚生労働大臣が障害の程度を診査し従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認められるときに職権で行う額の改定も年齢制限はありません。事後重症と混ざらないように・・・

問5. 障害基礎年金の額は、受給権者によって生計を維持している18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にある子があるときは、その子の数に応じた加算額が加算されるが、老齢基礎年金の額には、子の加算額が加算されない。

過去問 令和4年 国民年金法

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問5. 〇 前段は正しいです。「受給権者によって生計を維持されている」ですね。ここが「受給権を取得した当時、生計を維持されていた」となっていたら間違いなので注意です。後段部分、老齢基礎年金には、子の加算はありませんので、こちらも正しいです。 

障害基礎年金の額には、一定の要件に該当したら、子の加算が行われ「生計維持」に特徴がありました。受給権者によって生計を維持している子とは、障害基礎年金の受給権者と生計を同じくする者であって原則として、前年の収入金額が年額 850万円未満であること、又は前年の所得金額が年額 655万5千円未満となっています。

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