【国民年金法】死亡一時金

死亡一時金とは?

国民年金法には第1号被保険者であった者に対して「独自給付」があります。付加年金、寡婦年金、死亡一時金、脱退一時金です。今回は死亡一時金について学んでいこうと思います。死亡一時金は第1号被保険者として36月以上保険料を納付した人が死亡したときに遺族に対し一時金が支給される制度です。死亡一時金が支給されるのは一定の要件がありますので条文を見ていきます。

条文を見てみよう

国民年金保険法 第52条の2 1項(死亡一時金)

死亡一時金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間の月数、保険料4分の1免除期間の月数の4分の3に相当する月数、保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数及び保険料4分の3免除期間の月数の4分の1に相当する月数を合算した月数が36月以上である者が死亡した場合において、その者に遺族があるときに、その遺族に支給する。ただし、老齢基礎年金又は障害基礎年金支給を受けたことがある者が死亡したときは、この限りでない。

死亡一時金の支給要件

条文を読み解くと死亡一時金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての以下の被保険者期間にかかる月数を合算し36月以上ある者の遺族に支給する。

  • 保険料納付済期間の月数
  • 保険料4分の1免除期間の月数の4分の3に相当する月数
  • 保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数
  • 保険料4分の3免除期間の月数の4分の1に相当する月数

死亡一時金は掛け捨て防止措置ですので保険料全額免除期間は算入しません。

計算式に例えると
保険料納付済月数+(保険料1/4免除月数×3/4)+(保険料半額免除月数×1/2)+(保険料3/4免除月数×1/4)≧36月

条文の「ただし書き」により老齢基礎年金又は障害基礎年金支給を受けたことがあると死亡一時金は支給されないことが分かります。掛け捨て防止ですから理解できますよね。

法附則で「任意加入被保険者特例任意加入被保険者及び昭和61年4月1日前の国民年金の被保険者としての被保険者期間は、死亡一時金の規定の適用については、第1号被保険者としての被保険者期間とみなす」と規定されています。任意加入等していた期間も第1号被保険者とみなして、月数をカウントして良いということになります。寡婦年金はカウントできなかった特例任意加入被保険者期間も含まれるので注意です。

任意加入被保険者死亡一時金、脱退一時金、寡婦年金、付加保険料
特例任意加入被保険者死亡一時金、脱退一時金
(第1号被保険者とみなされる独自給付の横断)

死亡一時金の不支給

死亡一時金は、次の各号のいずれかに該当するときは、支給しないとされています。

一 死亡した者の死亡日においてその者の死亡により遺族基礎年金受けることができる者があるとき。(ただし、当該死亡日の属する月に当該遺族基礎年金の受給権が消滅したときを除く。)

二 死亡した者の死亡日において胎児である子がある場合であって、当該胎児であった子が生まれた日においてその子又は死亡した者の配偶者が死亡した者の死亡により遺族基礎年金を受けることができるに至ったとき。(ただし、当該胎児であった子が生まれた日の属する月に当該遺族基礎年金の受給権が消滅したときを除く。)

死亡した者の死亡により、遺族基礎年金の支給を受けることができると死亡一時金は支給されない。死亡した者の死亡日において胎児である子が生まれ、子か配偶者が遺族基礎年金の支給を受けることができると死亡一時金は支給されない。
遺族基礎年金受給権が発生したが支給を受けることなく当該遺族基礎年金が消滅したら死亡一時金が支給される。

第52条の2 3項
死亡した者のがその者の死亡により遺族基礎年金の受給権を取得した場合(その者の死亡によりその者の妻が遺族基礎年金の受給権を取得した場合を除く)であって、その受給権を取得した当時その子と生計を同じくするその子の父又は母があることにより当該遺族基礎年金支給が停止されるものであるときは、支給する。

この条文は読み解くのに苦労しますので図で理解したほうが分かりやすいです。死亡した夫に先妻との間に生計を維持する子がいたら、遺族基礎年金の受給権は先妻とのに発生しますが生計を同じくする母(先妻)がいる為に、支給が停止されている状態です。この場合は後妻に死亡一時金が支給されます。

同一人の死亡により寡婦年金も受けられるときは?

寡婦年金の解説ページにも書きましたが、同一人の死亡により寡婦年金死亡一時金を受けられるときは、選択受給になり他方は支給されません。また、その一方が支給されると、他方の受給権は消滅します。

死亡一時金の遺族の範囲

死亡一時金を受けることができる遺族は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者です。

遺族の順位

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹

同順位の遺族が複数いたら?

その1人がした請求は全員のために、その全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなします。つまり1人に対して支給するので、分け合って下さいという意味です。

死亡一時金の額

死亡一時金の額は下表の通りです。

保険料納付月数の合計金額
36月以上180月未満120,000円
180月以上240月未満145,000円
240月以上300月未満170,000円
300月以上360月未満220,000円
360月以上420月未満270,000円
420月以上320,000円

36月(3年)以上で120,000円
420月以上で最大320,000円という数字は暗記しましょう。

付加保険料を納めていたら・・・

死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間係る死亡日の前日における付加保険料に係る保険料納付済期間が3年以上である者の遺族に支給する死亡一時金の額には、8,500円が加算されます。


それでは過去問いきましょう

問1. 国民年金の給付は、名目手取り賃金変動率(-0.1%)によって改定されるため、3年間第1号被保険者としての保険料納付済期間を有する者が死亡し、一定範囲の遺族に死亡一時金が支給される場合は、12万円に(1 – 0.001)を乗じて得た額が支給される。なお、当該期間のほかに保険料納付済期間及び保険料免除期間は有していないものとする。

過去問 令和3年 国民年金法

問2. 死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る死亡日の前日における保険料納付済期間が36か月であり、同期間について併せて付加保険料を納付している者の遺族に支給する死亡一時金の額は、120,000円に8,500円を加算した128,500円である。なお、当該死亡した者は上記期間以外に被保険者期間を有していないものとする。

過去問 令和2年 国民年金法

問3. 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間の月数が18か月、保険料全額免除期間の月数が6か月、保険料半額免除期間の月数が24か月ある者が死亡した場合において、その者の遺族に死亡一時金が支給される。

過去問 令和2年 国民年金法

問4. 第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間を3年以上有し、老齢基礎年金の受給権取得当時から申出により当該老齢基礎年金の支給が停止されている者が死亡した場合には、一定の遺族に死亡一時金が支給される。

過去問 平成29年 国民年金法


解答
問1. ✕ 死亡一時金の額に賃金スライドや改定率を乗じることは無く定額です。死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間にかかる月数を合算した月数に応じて12万円~32万円の定額となっています。

問2. 〇 死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間が36月ありますので死亡一時金は定額の12万円。さらに、付加保険料をも併せて36月(3年)納付していますので8,500円が加算されます。

問3. ✕ 保険料納付済月数+(保険料1/4免除月数×3/4)+(保険料半額免除月数×1/2)+(保険料3/4免除月数×1/4)≧36月の計算式にあてはめると、保険料納付済期間が18月、半額免除期間が6月ですので
18月+(24月×1/2)=30月 36月に満たないので死亡一時金は支給されません。
保険料全額免除期間は計算の基礎に含めません。

問4. ✕ 死亡一時金は、老齢基礎年金又は障害基礎年金支給を受けたことがある者が死亡したときは支給されません。そして受給権者の申出による支給停止により、老齢基礎年金が停止されている場合には支給を受けていたものとみなされるので死亡一時金は支給されないことになっています。

死亡一時金には時効があります。死亡日の翌日から2年を経過したら請求はできません。死亡一時金の給付に要する費用(付加保険料納付済期間が3年以上ある場合の加算額8,500円に相当する部分に要する費用に限る。)の総額の4分の1に相当する額を国庫が負担しています。どちらも過去に問われていますのでおさえましょう。

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