【国民年金法】資格の取得・喪失(得喪)

被保険者となる日を資格の取得日、被保険者でなくなる日を喪失日といいます。資格の取得日や喪失日は、年金の計算で重要な日であり試験の論点としても頻出問題です。被保険者の種別が分からない人はこちらで先に学んでください。



被保険者の資格の取得

被保険者の種別ごとに、資格の取得事由が違います。それぞれ見ていきます。

第1号被保険者の資格取得

第1号被保険者の資格は、次のいづれかのに取得します。

  • 20歳に達した(誕生日の前日)
  • 日本国内に住所を有するに至った
  • 厚生年金法に基づく老齢給付等を受けることができる者その他国民年金法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者でなくなった日

第1号被保険者は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満第2号被保険者及び第3号被保険者でない者、強制加入でした。これが理解できていると簡単かと思います。

20歳に達した日とは、誕生日の前日の事であり、2月2日生まれだと2月1日が20歳に達した日になります。なぜ前日になるかというと、民法上は誕生日の前日に歳をとるからです。生まれた日を1日目(起算日)と数えるので起算日から365日経つのは誕生日の前日となります。重要論点ですので慣れましょう。

「厚生年金法に基づく老齢給付等を受けることができる者その他国民年金法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者でなくなった日」って何? 第1号被保険者は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満であれば原則、強制加入ですが老齢給付等を受けることができる者は適用除外されています。国会議員の互助年金とか、恩給法に基づく恩給とか60歳未満で受給できる制度があり適用除外されています。・・・が、刑罰等で禁固刑を処せられたら失権することもあったんです。すると60歳未満なので第1号被保険者の資格を取得しますよね。制度が昔すぎて現在受給している人がいるかも分からないし、いたとしても60歳未満というのはありえません。法律の穴をふさぐ為に、置いてあるだけの条文だと思われます。何が言いたいのかというと試験対策上、気にしなくて良いということです。

第2号被保険者の資格取得

  • 厚生年金保険の被保険者の資格を取得した

第2号被保険者厚生年金の被保険者でした。つまり厚生年金保険の被保険者の資格を取得したに第2号被保険者の資格も取得します。厚生年金と国民年金のダブル加入ですね。

第3号被保険者の資格取得

  • 被扶養配偶者となった
  • 被扶養配偶者が20歳に達した日

第3号被保険者は、第2号被保険者の配偶者で原則、日本に住所を有する20歳以上60歳未満の人でした。被扶養配偶者とは、主として第2号被保険者の収入により生計を維持するものです。

20歳以上60歳未満の人が被扶養配偶者になった日に資格を取得するパターンと20歳未満の被扶養配偶者が20歳に達した日の2パターンあります。

任意加入被保険者と特例任意加入被保険者の資格取得

  • 厚生労働大臣に任意加入の申し出をした

強制加入被保険者とならない人が、厚生労働大臣に申し出て、任意に国民年金に加入できる制度でした。申し出をした日に資格を取得します。

国民年金の被保険者の資格の取得は、すべて「その日」です。喪失は「その日」と「翌日」があり、この違いが試験によく問われます。

被保険者の資格の喪失

資格の喪失は、原則「翌日喪失」ですが「その日喪失」もありますので見ていきましょう。

共通の資格喪失

  • 死亡した日の翌日


第1号被保険者の資格喪失

  • 日本国内に住所を有しなくなった日の翌日※1
  • 国民年金法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者となった日の翌日
  • 60歳に達した
  • 厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者となった

第2号被保険者の資格喪失

  • 厚生年金保険法の被保険者の資格を喪失した※2
  • 65歳に達した(老齢の年金の受給権を有する場合に限る)

第3号被保険者の資格喪失

  • 60歳に達した
  • 被扶養配偶者でなくなった日の翌日※3

※1. 日本国内に住所を有しなくなった日に、第2号・第3号被保険者に該当したときは、その日
※2. ただし、第1号・第3号被保険者に該当したときは資格は喪失せず種別の変更
※3. ただし、第1号・第2号被保険者に該当したときは資格は喪失せず種別の変更

資格喪失とは国民年金の被保険者資格を喪失するということです。例えば、第1号被保険者から第2号被保険者に変わったときは資格喪失ではありません。国民年金の被保険者であることに違いは無いので種別の変更という扱いになります。

第1号被保険者の資格喪失に、日本国内に住所を有しなくなった日の翌日とありますが、※1にあるように、日本国内に住所を有しなくなった日に、第2号・第3号被保険者に該当したときは、その日喪失とあります。これって種別の変更ではないの?なんで?第1号被保険者は海外に出ると一旦資格を喪失すると覚えて下さい。で、日本国内に住所を有しなくなった日に、第2号・第3号被保険者に該当したときは「同日得喪」と言ってその日に第2号・第3号被保険者の資格を取得します。その日に喪失してその日に取得し資格をだぶらせないようにしています。

原則は「翌日喪失」です。で、数の少ない「その日」喪失を暗記すればいいです。

強制被保険者の その日喪失
  • 年齢到達(1号・3号は60歳到達、2号は65歳到達)
  • 同日得喪(種別の変更との違いに注意)
  • 厚生年金の資格喪失(第2号被保険者60歳以上65歳未満)※
    ※ 厚生年金喪失=国民年金喪失と同じ日なので当日喪失となります



任意加入被保険者・特例任意加入被保険者の資格喪失


共通の資格喪失

  • 死亡した日の翌日
  • 厚生年金保険の被保険者の資格を取得した同日得喪
  • 厚生労働大臣に対する喪失の申し出受理された日
  • (国内居住)日本に住所を有しなくなった日の翌日
  • (国内居住)保険料を滞納し督促状の指定期限までに保険料を納付しなかった翌日
  • (国外居住)日本に住所を有するに至った日の翌日
  • (国外居住)保険料を滞納し納付することなく2年間が経過した日の翌日
  • (国外居住)日本国籍を有する者でなくなった日の翌日

任意加入被保険者の資格喪失

  • 65歳に達した
  • 老齢基礎年金が満額となる期間(480月)を満たした

特例任意加入被保険者の資格喪失

  • 70歳に達した
  • 老齢基礎年金の受給権を取得した日の翌日

特例任意加入被保険者が老齢基礎年金の受給権を取得したら、なぜ翌日に喪失させるのか?被保険者期間は「資格を取得した日の属する月から資格を喪失した日の属する月の前月」までを計算します。受給権が発生するのは最後の月の月末ですから翌日に喪失させないと最後の月が被保険者期間の計算に入らなくなるからです。

任意加入も原則は「翌日喪失」です。で、数の少ない「その日」喪失を暗記すればいいです。強制被保険者も含めてまとめると・・・

強制被保険者と任意加入の その日喪失
  • 年齢到達
  • 同日得喪
  • 厚生年金の資格喪失(第2号被保険者60歳以上65歳未満)※
    ※ 厚生年金喪失=国民年金喪失と同じ日なので当日喪失となります
  • 申し出受理(任意加入者)
  • 満額の480月到達(任意加入者)

その日喪失は、これだけなので暗記しちゃいましょう。

豆知識

昭和40年4月1日以前生まれの任意加入被保険者が65歳に達したときに、老齢基礎年金の受給権を有していないときは、65歳に達したときに特例任意加入への申し出があったものとみなされて65歳に達した日に特例任意加入被保険者の資格を取得します。

では過去問いきましょう

問1. 任意加入被保険者及び特例による任意加入被保険者は、老齢基礎年金又は老齢厚生年金の受給権を取得した日の翌日に資格を喪失する。

過去問 令和3年 国民年金法

←正解はこちら
問1. ✕ 65歳未満の任意加入被保険者は、老齢年金の受給権を得る為に任意加入できますが、主に年金額を増やす為です。喪失は65歳に達した日か、老齢基礎年金が満額となる期間(480月)を満たした日となります。一方、65歳以上70歳未満の特例任意加入は「老齢年金の受給権」を得るのが目的です。なので特例任意加入被保険者は「老齢年金の受給権」を得たら翌日に喪失します。

問2. 厚生年金保険の被保険者が、65歳に達し老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権を取得したときは、引き続き厚生年金保険の被保険者資格を有していても、国民年金の第2号被保険者の資格を喪失する。

過去問 令和4年 国民年金法

←正解はこちら
問2. 〇 厚生年金保険の被保険者つまり国民年金法の第2号被保険者の資格喪失は、65歳に達した日(老齢の年金の受給権を有する場合に限る)です。なお、老齢の年金の受給権を有していなかったら引き続き国民年金第2号被保険者の資格は喪失しません。

問3. 厚生年金保険の被保険者が19歳であって、その被扶養配偶者が18歳である場合において、その被扶養配偶者が第3号被保険者の資格を取得するのは当該被保険者が20歳に達したときである。

過去問 令和4年 国民年金法

←正解はこちら
問3. ✕ 被保険者が20歳に達したときでなはく、被扶養配偶者が20歳に達したときです。用語の定義も大事ですね。設問の厚生年金保険の被保険者19歳は、国民年金第2号被保険者です。被扶養配偶者18歳は国民年金第3号被保険者になれますが「20歳以上60歳未満」という年齢要件がありますので、被保険者(第2号被保険者)が20歳に達しても被扶養配偶者は、まだ19歳であり第3号被保険者にはなれません。

問4. 第3号被保険者が、外国に赴任する第2号被保険者に同行するため日本国内に住所を有しなくなったときは、第3号被保険者の資格を喪失する。

過去問 令和3年 国民年金法

←正解はこちら
問4. ✕ 第2号被保険者に国内居住要件はありませんが、第3号被保険者は原則、国内居住要件があります。例外として「日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者」は第3号被保険者の資格は喪失しません。第3号被保険者が、外国に赴任する第2号被保険者に同行する行為は、日本国内に生活の基礎があると認められます。

問5. 第3号被保険者が被扶養配偶者でなくなった時点において、第1号被保険者又は第2号被保険者に該当するときは、種別の変更となり、国民年金の被保険者資格は喪失しない。

過去問 令和3年 国民年金法

←正解はこちら
問5. 〇 国民年金法において資格の「喪失」と「種別の変更」の区別はしっかりと理解して下さい。国民年金法の強制被保険者内(第1号・第2号・第3号)で種別が移動するときは資格は喪失せずに「種別の変更」がおこなわれます。つまり強制被保険者の資格の得喪は殆ど起こらないですね。

国民年金法は被保険者の種別ごとの要件をしっかりと理解して、いつ資格を取得するのか?喪失は「翌日」なのか「その日」なのかが大事になります。厚生年金保険法の被保険者は国民年金法の第2号被保険者ですので、厚生年金保険法を理解しないと難しいかもしれません。厚生年金保険法の勉強を終えてから戻ってくると理解が進むでしょう。

この記事が参考になったら応援お願いします。↓

にほんブログ村 資格ブログ 社労士試験へ
資格受験ランキング

コメント