【国民年金法】未支給年金

未支給年金とは?

年金は後払いが原則な為、年金の受給者が死亡したら、必ず未支給年金が発生します。
年金給付は、支給事由が生じた日の属する月の翌月から権利が消滅した日の属するまで支給されます。そして支払い月は、毎年偶数月の6期に分けてそれぞれの前月までの分が支給されます。例えば3月に死亡したら直近の支払い月は2月で、12月分と1月分が支給済です。年金は死亡した(消滅した日の属する月)まで支給されるので2月と3月分が未支給年金となるわけです。

条文を見てみよう

第19条(未支給年金)

 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。

未支給年金を請求できるのは、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹3親等内の親族で、死亡の当時その者と生計を同じくしていた者ですね。生計維持ではなく生計同一です。生計維持とは生計同一要件に加え収入要件も絡んできますが、生計同一は収入要件は問われず生計を同じくしていれば認められるので明らかな違いがあります。死亡一時金も未支給っぽいですが国民年金法の未支給の規定の対象が「年金給付」ですので死亡一時金は対象外です。遺族の範囲も違い配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹までで、これらの者以外の3親等内の親族は対象外となります。

↓死亡一時金についての解説は↓


順位

未支給の年金を受ける者の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、3親等内の親族の順となります。また、同順位が2人以上いた場合は、「その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなされます」つまりは代表者(その1人)が請求して後は自分たちで分け合って下さいという意味です。

年金給付の受給権者は死亡していますから、自己の名で請求することになります。

死亡した者が、遺族基礎年金の受給権者だったら?

遺族基礎年金は支給要件に該当する子か、該当する子と生計を同じくする配偶者に支給される年金です。がキーワードになります。

死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であったときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者のは、同項に規定する子とみなす。(第19条2項)

図で理解してから条文に戻ると理解しやすいです。

婚姻関係にあった妻は、夫の連れ子(継子)と養子縁組していなくても「生計を同じく」していたら夫の死亡について、遺族基礎年金の受給権者になれます。その妻が未支給年金を残して死亡したらどうなるでしょう?

加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者のは、未支給の年金を請求できるとみなされます。受給権者の後妻の子ではありませんから本来は未支給年金を請求できませんが、後妻の子とみなして請求できることになります。

年金を裁定請求する前に死亡したら?

死亡した受給権者が、死亡前に裁定請求していなかった場合も未支給年金を請求できます。例えば老齢基礎年金を繰下げ待機中の人が死亡したら、一定の遺族は増額されていない(65歳から死亡するまでに受け取るはずだった本来支給の老齢基礎年金)未支給年金を請求できます。

では過去問いきましょう

問1. 老齢基礎年金を受給している者が、令和5年6月26日に死亡した場合、未支給年金を請求する者は、死亡した者に支給すべき年金でまだその者に支給されていない同年5月分と6月分の年金を未支給年金として請求することができる。なお、死亡日前の直近の年金支払日において、当該受給権者に支払うべき年金で支払われていないものはないものとする。

過去問 令和5年 国民年金法

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問1. ✕ 年金は偶数月(2,4,6,8,10,12月)に、それぞれの前月までの分が支給されます。支給日は15日で設問の人は6月15日に4月分と5月分が支給されていますので6月分だけが未支給となります。

問2. 第1号被保険者である夫の甲は、前妻との間の実子の乙、再婚した妻の丙、丙の連れ子の丁と4人で暮らしていたところ甲が死亡した。丙が、子のある妻として遺族基礎年金を受給していたが、その後、丙も死亡した。丙が受け取るはずであった当該遺族基礎年金が未支給年金となっている場合、丁は当該未支給年金を受給することができるが、乙は当該未支給年金を受給することができない。なお、丁は甲と養子縁組をしておらず、乙は丙と養子縁組をしていないものとする。

過去問 令和3年 国民年金法

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問2. ✕ 事例問題ですね💦 このように複雑な問題は簡単な図を描いて解くことをおすすめします。夫の甲の死亡により再婚した妻の丙が遺族基礎年金を受給しています。その妻が死亡した時の未支給年金は妻の子でない前妻との子(乙)は、「加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者の子は、未支給の年金を請求できる子とみなされる」ので請求できます。

問3. 65歳に達したときに老齢基礎年金の受給資格を満たしていたが、裁定を受けていなかった68歳の夫が死亡した場合、生計を同じくしていた65歳の妻は、夫が受け取るはずであった老齢基礎年金を未支給年金として受給することができる。この場合、夫が受け取るはずであった老齢基礎年金は、妻自身の名で請求し、夫が65歳に達した日の属する月の翌月分から死亡月の分までの受け取るはずであった年金を受け取ることになる。

過去問 平成29年 国民年金法

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問3. 〇 死亡した受給権者が、死亡前に裁定請求していなかった場合も未支給年金を請求できます。65歳に達した日の属する月の翌月分から死亡月の分まで受け取るはずだった本来支給の老齢基礎年金を自己の名(妻自身の名)で未支給年金として請求できます。

問4. 年金給付の受給権者が死亡した場合で、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるとき、自己の名で、その未支給年金の支給を請求することができる者は、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の3親等内の親族であって、当該受給権者の死亡当時その者により生計を維持されていた者に限る。

過去問 平成19年 国民年金法

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問4. ✕ 問題で「限る」と書かれていたら他に例外がないか疑いますよね。ぱっと見た感じ〇に見えますが、最後の「生計を維持」が間違っています。正しくは「生計を同じく」となります。未支給年金の請求は要件がゆるく生計同一であれば可能です。

未支給の保険給付は横断で整理しよう

未支給の保険給付は、労働保険(労災・雇用)と社会保険(国年・厚年)で遺族の範囲等に違いがあります。時効は5年ですが、雇用保険の未支給の失業等給付は死亡日の翌日起算で6月以内となっています。横断で整理することをおすすめします。


年金の受給権者が死亡したら必ず発生する未支給は、試験にも頻繁に問われる重要な論点です。また各法で違いもあり横断で整理する必要もあります。健康保険法には未支給の規定が無い為、民法の相続人が未支給給付を受けることになるんですね。

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コメント

  1. みつくん より:

    まさに3親等や生計同一がミソですね。当然3親等の範囲も大事です。おいめいやおじおば、ひ孫、曾祖父母は有ってもいとこはないみたいに。ありがとうございます。