【国民年金法】遺族基礎年金の要件

遺族基礎年金とは?

遺族基礎年金は、死亡した人と、年金が支給される残された遺族の双方の要件が必要になります。それぞれの要件を、しっかりと学びましょう。

条文を見てみよう

第37条(遺族基礎年金の支給要件)

遺族基礎年金は、被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の配偶者又はに支給する。ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあつては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。

 被保険者が、死亡したとき。

 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であるものが、死亡したとき。

 老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る。)が、死亡したとき。

 保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が、死亡したとき。

遺族基礎年金は、配偶者又はに支給されます。37条には死亡した人の要件が書かれています。

被保険者要件は、大きく2つに大別されます。

死亡者の要件(短期要件)

①死亡者の要件(保険料納付要件必要
  • 被保険者である者
  • 被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満である者

このグループ(短期要件)は、保険料納付要件を問われます。おなじみの文言になります。「死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上あること」

なぜ死亡日前日なのか?

それは死亡日に保険料を駆け込み納付する不正を排除しているからです。なので死亡日の前日

なぜ死亡日前々日なのか?

保険料の納付は翌月末日が納期限です。例えば4月1日が死亡日だったとすれば、前々月(2月)の保険料は3月31日が納期限となります。よって前々月までの保険料納付状況をみることになります。

支給要件の特例

原則の保険料納付要件は「死亡日の前日において死亡日の前々月までに、被保険者期間があるときは当該被保険者期間に係る保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上必要」でした。

令和8年4月1日前の死亡については、保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が被保険者期間の3分の2以上に満たないときでも支給される特例があります。

昭和60年法附則20条2項(障害基礎年金等の支給要件の特例)

2 令和8年4月1日前に死亡した者について、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の「3分の2に満たないとき」とあるのは、「3分の2に満たないとき(当該死亡日の前日において当該死亡日の属する月の前々月までの1年間(当該死亡日において被保険者でなかつた者については、当該死亡日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの1年間)のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないときを除く。)」とする。ただし、当該死亡に係る者が当該死亡日において65歳以上であるときは、この限りでない。

条文が読み取りにくいですが、簡単にすると「保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がない」とは「未納(滞納)期間がない」という意味です。

つまり、死亡日の前日において当該死亡日の属する月の前々月までの1年間未納(滞納)がなければ保険料納付要件を満たせるということになります。ただし書きも重要です。死亡日において65歳以上に人には適用されません。

死亡者の要件(長期要件)

②死亡者の要件(保険料納付要件不要
  • 老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る。)
  • 保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者

こちらのグループ(長期要件)は、保険料納付要件を問われません。

法附則9条に「保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が25年に満たない者であって保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上であるものは、第37条(第3号及び第4号に限る。)の規定の適用については、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上であるものとみなす。」と規定されています。

保険料納付済期間保険料免除期間を合算して25年に満たない場合は、合算対象期間を加えることができますので、「保険料納付済期間保険料免除期間及び合算対象期間」を合算した期間が25年以上あれば、遺族基礎年金の支給要件を満たします。ただし、合算対象期間だけを25年以上有していても要件を満たしません。保険料納付済期間保険料免除期間のどちらかを1月以上有する必要があります。

他にも、保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が25年に満たない者でも25年以上あるものとしてみなす特例がありますので見ていきましょう。

受給資格期間の特例(昭和5年4月1日以前生まれ)

旧国民年金法が施行された昭和36年4月1日の時点で30歳を超えている人は、60歳までの被保険者期間中に25年(長期要件)を満たすことは困難です。そこで受給資格期間の特例として、以下の生年月日の方は、期間に応じて25年にみなす制度が定められています。

生年月日期間
大正15年4月2日生~昭和2年4月1日生21年
昭和2年4月2日生~昭和3年4月1日生22年
昭和3年4月2日生~昭和4年4月1日生23年
昭和4年4月2日生~昭和5年4月1日生24年
受給資格期間の特例



被用者年金各法の特例(昭和31年4月1日以前生まれ

旧国民年金法が施行された昭和36年4月1日の時点で、被用者年金制度(旧厚生年金など)は、既に施行済です。旧法時代の被用者年金制度の老齢年金の受給資格期間は20年だっため、新法施行年度中(昭和61年)に35歳以上となる昭和27年4月1日以前生まれの者については、旧法時代の20年と同じ受給資格期間で満たすことにしました。そこで以下の生年月日の方は、期間に応じて25年にみなす制度が定められています。

生年月日期間
昭和27年4月1日生以前20年
昭和27年4月2日生~昭和28年4月1日生21年
昭和28年4月2日生~昭和29年4月1日生22年
昭和29年4月2日生~昭和30年4月1日生23年
昭和30年4月2日生~昭和31年4月1日生24年
被用者年金各法の特例



厚生年金保険の中高齢者の特例(昭和26年4月1日以前生まれ

旧厚生年金法では、男性は40歳以降(女性は35歳)に15年以上加入していれば老齢年金の受給期間を満たす特例がありました。そこで新法施行年度中(昭和61年)に40歳以上となる昭和22年4月1日以前生まれの者については、旧法時代と同じ40歳以後(女性は35歳)の厚生年金被保険者期間(第1号厚生年金被保険者期間に限る)が15年あれば、受給資格期間を満たすことにしました。(この期間のうち、7年6か月以上は、第4種被保険者又は船員任意継続被保険者以外の被保険者期間でなければいけません。)

また、旧厚生年金保険には第3種被保険者(船員・坑内員)又は船員任意継続被保険者としての被保険者期間が35歳以降15年以上加入していれば老齢年金の受給期間を満たす特例があり、これについても中高齢者の特例となります。(10年以上が、船員任意継続被保険者以外の被保険者期間である場合に限ります。)

以下の生年月日の方は、期間に応じて25年にみなす制度が定められています。

生年月日期間
昭和22年4月1日生以前15年
昭和22年4月2日生~昭和23年4月1日生16年
昭和23年4月2日生~昭和24年4月1日生17年
昭和24年4月2日生~昭和25年4月1日生18年
昭和25年4月2日生~昭和26年4月1日生19年
厚生年金保険の中高齢者の特例

まとめて整理します。

保険料納付済期間保険料免除期間とを合算した期間が25年に満たない者でも25年以上あるものとしてみなす特例は、3つあります。

受給資格期間の特例保険料納付済期間と保険料免除期間と合算対象期間を合算した期間が生年月日に応じて21年から24年ある
被用者年金各法の特例厚生年金保険及び船員保険の被保険者期間を合算した期間が生年月日に応じて20年から24年ある
厚生年金保険の中高齢者の特例40歳(女性は35歳)以後の厚生年金被保険者期間(第1号厚生年金被保険者期間に限る)が生年月日に応じて15年から19年ある(第4種被保険者及び船員任意継続被保険者以外の被保険者期間が7年6か月以上ある場合に限る。)

35歳以後の第3種被保険者(船員・坑内員)又は船員任意継続被保険者としての被保険者期間が、生年月日に応じて15年から19年ある(船員任意継続被保険者以外の被保険者期間が10年以上ある場合に限る。)



死亡の推定

第18条の3(死亡の推定)

船舶沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗つていた者若しくは船舶に乗つていてその船舶の航行中に行方不明となつた者の生死が3箇月間分らない場合又はこれらの者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合には、死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用については、その船舶沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた日又はその者が行方不明となつた日に、その者は、死亡したものと推定する。航空機墜落し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその航空機に乗つていた者若しくは航空機に乗つていてその航空機の航行中に行方不明となつた者の生死が3箇月間分らない場合又はこれらの者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合にも、同様とする。



失踪宣告

第18条の4(失踪宣告の場合の取扱い)

失踪の宣告を受けたことにより死亡したとみなされた者に係る死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用についての、被保険者要件保険料納付要件生計維持要件の規定の「死亡日」とあるのは「行方不明となつた日」とし、「死亡の当時」とあるのは「行方不明となつた当時」とする。ただし、受給権者又は給付の支給の要件となり、若しくはその額の加算の対象となる者の身分関係年齢及び障害の状態に係るこれらの規定の適用については、この限りでない。

死亡を支給事由とする給付は「遺族基礎年金」、「寡婦年金」、「死亡一時金」である。

身分関係年齢障害の状態は「死亡したとみなされた日」を基準とする。

被保険者要件保険料納付要件生計維持要件は「行方不明となった日」を基準とする。

失踪宣告とは、行方不明となった日から7年を経過した日に死亡とみなされる民法の規定


それでは過去問いきましょう

問1. 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である55歳の第1号被保険者が死亡したとき、当該死亡日の前日において、当該死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料が未納である月があった場合は、遺族基礎年金を受けることができる要件を満たす配偶者と子がいる場合であっても、遺族基礎年金は支給されない。

過去問 令和4年 国民年金法

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問1. ✕ 55歳の第1号被保険者が死亡していますので保険料納付要件が問われる所、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間を25年以上有していますので長期要件にも該当しています。よって保険料納付要件は問われませんので、要件を満たす配偶者と子がいれば遺族基礎年金が支給されます。

問2. 平成30年4月2日に第1号被保険者が死亡した場合、死亡した者につき、平成30年4月1日において、平成29年3月から平成30年2月までの期間に保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないときは、遺族基礎年金の保険料納付要件を満たす。

過去問 平成30年 国民年金法

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問2. 〇 令和8年4月1日前の死亡については、死亡日の「前日」において当該死亡日の属する月の「前々月」までの1年間に未納(滞納)がなければ保険料納付要件を満たす特例があります。ただし、死亡日において65歳以上に人には適用されません。設問の人は第1号被保険者とありますので60歳未満ということが分かります。

問3. 合算対象期間を25年以上有し、このほかには被保険者期間を有しない61歳の者が死亡し、死亡時に国民年金には加入していなかった。当該死亡した者に生計を維持されていた遺族が14歳の子のみである場合、当該子は遺族基礎年金を受給することができる。

過去問 令和元年 国民年金法

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問3. ✕ 保険料納付済期間と保険料免除期間を合算して25年に満たない場合は、合算対象期間を加えることができますので、「保険料納付済期間と保険料免除期間及び合算対象期間」を合算した期間が25年以上あれば、遺族基礎年金の支給要件を満たします。ただし、合算対象期間だけを25年以上有していても要件を満たしません。保険料納付済期間と保険料免除期間のどちらかを1月以上有する必要があります。

問4. 保険料納付済期間又は保険料免除期間(学生納付特例及び納付猶予の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るものを除く。)を合算した期間を23年有している者が、合算対象期間を3年有している場合、遺族基礎年金の支給要件の規定の適用については、「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上であるもの」とみなされる。

過去問 令和4年 国民年金法

←正解はこちら
問4. 〇 保険料納付済期間と保険料免除期間を合算して25年に満たない場合は、合算対象期間を加えることができますので、「保険料納付済期間と保険料免除期間及び合算対象期間」を合算した期間が25年以上あれば、遺族基礎年金の支給要件を満たします。合算対象期間だけを25年以上有していても要件を満たさないので注意です。

問5. 失踪の宣告を受けたことにより死亡したとみなされた者に係る遺族基礎年金の支給に関し、死亡とみなされた者についての保険料納付要件は、行方不明となった日において判断する。

過去問 令和2年 国民年金法

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問5. ✕ 失踪の宣告において、被保険者要件、保険料納付要件、生計維持要件は「行方不明となった日」を基準とする。つまり保険料納付要件は「死亡日の前日」において判断しますので、失踪の宣告においては行方不明となった日の「前日」で判断します。細かいですが注意しましょう。

給付は「要件」に当てはまらないと支給されませんので大事な論点となります。しっかりと抑えましょう。保険料納付要件は、短期要件は問われ、長期要件は問われません。遺族基礎年金は、死亡した人と、給付を受ける遺族の2つの要件がありますので、次回の遺族の範囲もあわせてご覧ください。

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