【国民年金法】保険料免除(産前産後期間の免除・法定免除)

第1号被保険者の保険料免除とは?

保険料の免除は第1号被保険者にのみ認められた制度で産前産後期間の免除や、法律上当然に免除される法定免除、さらに申請して免除される申請免除の3つに大きく分けられます。国民年金の第1号被保険者は20歳から60歳までの間、無職であろうが定額の保険料が徴収されます。収入がない場合など保険料を納めることが困難な人には、保険料の納付を免除する制度が設けられています。


産前産後期間の免除

産前産後免除は、第1号被保険者が出産した場合にその前月から翌々月までの4か月間の保険料が全額免除される制度です。平成31年4月から、次世代育成支援のため制度が導入され16,900円だった保険料が、財源確保のために100円引き上げられ17,000円になりました。条文を見てみます。

条文を見てみよう

第88条の2(産前産後期間の保険料免除) 

被保険者は、出産の予定日(厚生労働省令で定める場合にあつては、出産の日。第106条第1項及び第108条第2項において「出産予定日」という。)の属する月(以下この条において「出産予定月」という。)の前月(多胎妊娠の場合においては、3月前)から出産予定月の翌々月までの期間に係る保険料は、納付することを要しない。

出産の予定日の属する月の前月から出産予定月の翌々月までの期間は保険料の納付を要しない。と書いてありますね。多胎妊娠の場合は、予定日の属する月の3月前から出産予定月の翌々月までです。

第1号被保険者の妊娠が判明し、出産予定日が分かれば予定日の6か月前以降に、市町村に届け出をすることで保険料が全額免除されます。条文に書かれている青文字の厚生労働省令で定める場合というのは、届け出を行う前に出産された場合は出産予定日ではなく出産日が基準となるという意味です。どちらにせよ「出産日の属する月の前月から出産日の翌々月までの期間は保険料の納付を要しない」となるので4か月間、保険料が免除されるのには違いはありません。

最大の特徴は保険料が全額免除されているのに納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。いくつかポイントがありますので頭にいれましょう。

  • 出産予定日の6か月前から市町村に届け出できる
  • 産前産後免除は法定免除・申請免除よりも優先される
  • 死産、流産、早産でも保険料は免除される
  • 保険料を納付したものとして扱われる
  • 産前産後免除期間についても付加保険料を納付できる
  • 任意加入被保険者は、産前産後期間に係る保険料免除は適用されない

問題. 令和元年10月31日に出産予定である第1号被保険者(多胎妊娠ではないものとする。)は、令和元年6月1日に産前産後期間の保険料免除の届出をしたが、実際の出産日は令和元年11月10日であった。この場合、産前産後期間として保険料が免除される期間は、令和元年10月分から令和2年1月分までとなる。

過去問 令和1年 国民年金法

←正解はこちら
✕ 出産の予定日の属する月の前月から出産予定月の翌々月までの期間は保険料の納付を要しない。設問の人は出産予定日よりも前に届け出を済ませていますので実際の出産が遅れても出産予定日が基準となり令和元年9月分から令和元年12月分までが免除されます。4か月間免除されるのに違いはないし不利にはなりませんね。届け出を行う前に出産した場合は正しい設問となります。

法定免除

第1号被保険者が一定の要件を満たすと、その該当する期間は法律上当然に保険料が免除されます。では条文を見てみましょう。

条文を見てみよう

第89条(法定免除)

 被保険者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、その該当するに至つた日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属する月までの期間に係る保険料は、既に納付されたものを除き、納付することを要しない。

 障害基礎年金又は厚生年金保険法に基づく障害を支給事由とする年金たる給付その他の障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの受給権者(最後に厚生年金法に規定する障害等級1級、2級、3級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して当該障害の状態に該当することなく3年を経過した障害基礎年金等を除く)であるとき。

 生活保護法による生活扶助その他の援助であつて厚生労働省令で定めるものを受けるとき。

 ハンセン病療養所、国立保養所等に入所しているとき。

 前項の規定により納付することを要しないものとされた保険料について、被保険者又は被保険者であつた者(以下「被保険者等」という。)から当該保険料に係る期間の各月につき、保険料を納付する旨の申出があつたときは、当該申出のあつた期間に係る保険料に限り、同項の規定は適用しない。

障害基礎年金の受給権者や生活保護法による生活扶助を受ける人、ハンセン病療養所等に入所している人は保険料が免除される規定ですね。
重要論点としては障害基礎年金の受給権を持たない障害厚生年金3級の受給権者は対象となっていないことです。青文字のカッコ書きの意味ですが、障害等級1級2級の人が障害状態が軽減し3級になると障害基礎年金は支給停止となりますが保険料は免除のままです。さらに障害状態が軽減して3級にも不該当になっても保険料は免除のまま。そして3級不該当から3年経過したら、いよいよ免除対象外となり保険料を納めないといけなくなります。図にするとこうなります。

法定免除の規定で保険料が免除された人の将来の年金額は、2分の1で計算されますので老齢基礎年金を増やしたい場合は、保険料を納付する旨の申し出をすることにより、当該申出のあった期間に係る保険料に限り納付することが出来ます。(第89条2項)さらに保険料の納付を申し出た人は付加保険料の納付や国民年金基金にも加入できます。


保険料免除に関する届け出

第1号被保険者は、法定免除に該当するに至ったときは、14日以内に所定の届書を市町村に提出しなければいけませんが・・・・・重要論点↓
厚生労働大臣(機構)が法定免除に該当するに至ったことを確認したときは、提出不要です。

  • 該当するに至った日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属する月までが対象
  • 障害基礎年金の受給権者、障害厚生年金1級2級の受給権者が対象で3級の人は対象外
  • 一度でも1級2級に該当した人は3級不該当に軽減し3年経過までは免除される
  • 保険料を納付する旨の申し出をしたら納付でき、付加保険料の納付や国民年金基金にも加入が可能
  • 厚生労働大臣(機構)が確認したときは、届け出が不要
  • 任意加入被保険者及び特例任意加入被保険者には、法定免除の規定は適用されない
  • 法定免除は被保険者本人に対して該当していれば良く、他の世帯員の収入状況に関係なく判断される



問題. 任意加入被保険者は、生活保護法による生活扶助を受けることとなった場合でも、いわゆる法定免除の対象とならない。

過去問 平成23年 国民年金法

←正解はこちら
〇 生活保護法による生活扶助を受けることになったら法定免除されますが、前提として国民年金第1号被保険者でなければいけません。法定免除に限らず、保険料免除(産前産後期間の保険料免除、法定免除、申請免除、学生納付特例、納付猶予)の規定の適用は第 1 号被保険者に限られ、任意加入被保険者及び特例任意加入被保険者については適用されないとされていますので注意しましょう。

問題. 学生納付特例による保険料納付猶予の適用を受けている第1号被保険者が、新たに保険料の法定免除の要件に該当した場合には、その該当するに至った日の属する月の前月から、これに該当しなくなる日の属する月までの期間、法定免除の適用の対象となる。

過去問 令和5年 国民年金法

←正解はこちら
〇 学生納付特例よりも法定免除が優先されるので正解となります。保険料免除には優先順位があり、被保険者に有利な方が優先されます。産前産後期間の保険料免除は保険料が納付済期間とされますので全ての免除制度において優先されます。設問の学生納付特例は追納しない限り、将来の年金額の計算には反映されませんが法定免除は2分の1が反映されますので法定免除が適用されます。

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コメント

  1. みつくん より:

    法律上当然の意味(法89条)が分かりやすいですね。生活保護や寡婦などはあくまでも申請で免除だから混同しやすいです。ありがとうございます📕