【国民年金法】保険料・保険料改定率

付加保険料

保険料

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、全て国民年金の被保険者になり、第2号被保険者や第3号被保険者にならない人は、第1号被保険者でした。第2号被保険者と第3号被保険者は国民年金の被保険者ではありますが、国民年金の保険料を納付していません。集めた厚生年金の保険料の一部を政府等が基礎年金拠出金として国民年金に拠出しているんでしたね。ここでは、保険料について学びます。

保険料の額

令和元年度以後は月額17,000円✕保険料改定率となっています。

第1号被保険者は、この保険料を納付する義務があります。また世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負い、配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負います。(第88条)

条文を見てみよう

第87条(保険料)
政府は、国民年金事業に要する費用に充てるため、保険料を徴収する。

 保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする。

 保険料の額は、次の表の上欄に掲げる月分についてそれぞれ同表の下欄に定める額に保険料改定率を乗じて得た額(その額に5円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て5円以上10円未満の端数が生じたときは、これを10円切り上げるものとする。)とする。

平成17年度に属する月の月分13,580円
平成18年度に属する月の月分13,860円
中略
平成29年度及び平成30年度に属する月の月分16,900円
令和元年度以後に属する月の月分17,000円


保険料は月額、基準額✕保険料改定率となっています。平成17年度に基準額13,580円で保険料改定率1に決定。毎年基準額は280円ずつ引き上がり平成29年16,900円に固定されましたが、平成31年4月から第1号被保険者に「産前産後期間の免除」の制度が導入され、その原資として令和元年度以後に属する月の月分から基準額が100円引き上げられ17,000円に固定されました。

保険料改定率とは?

保険料改定率前年度の保険料改定率名目賃金変動率

保険料改定率は平成17年度を1と決めたうえで、それぞれの年度の前年度の保険料改定率名目賃金変動率を乗じて得た率を基準として改定し、当該年度に属する月の月分の保険料について適用します。物価や賃金の伸び率を考慮して毎年度見直しが入るんですね。

名目賃金変動率とは?

名目賃金変動率実質賃金変動率物価変動率

4年前(3年前から5年前のものの3年平均)の年度の実質賃金変動率前々年(2年前)の物価変動率を使用する。2年前の物価変動率を使用するということは、逆に来年度分の保険料まで決まってしまうことが理解できますか?既に前年の物価変動率は分かっていますから。だから最大2年分、前納できるんです。

さて、保険料額は17,000円に保険料改定率を乗じて計算されますが、年金の額は満額で780,900円に改定率を乗じて計算します。「保険料改定率」と「改定率」は全くの別物ですので、ごっちゃにならないようにしましょう。年金額の計算では「前年の物価変動率」を使用しますが、保険料額は「前々年の物価変動率」を使用します。令和5年度でいえば、年金額は増額したのに保険料額は減額と、違う結果になりました。保険料改定率改定率は別物というのが分かりますね。

令和6年度の保険料は?

令和5年度の保険料は17,000円に保険料改定率(0.972)を乗じて16,520円でした。
令和6年度の保険料改定率は0.999と決まっていますので、17,000 円×保険料改定率(0.999)=16,980 円(5円未満切捨て)となります。令和5年度より460円アップしますね。

第2号被保険者と第3号被保険者の保険料は?

第94条の6(第2号被保険者及び第3号被保険者に係る特例)

第2号被保険者としての被保険者期間及び第3号被保険者としての被保険者期間については、政府は、保険料を徴収せず、被保険者は、保険料を納付することを要しない。

第2号被保険者も第3号被保険者も保険料を納付する必要はないと条文にありますね。将来受け取る老齢基礎年金等の原資は、基礎年金拠出金という形で、厚生年金が制度全体として毎年、国民年金に繰り入れています。

基礎年金拠出金の記事は↓



保険料の納期限等

毎月の保険料の納期限は、翌月末日です。

厚生労働大臣は、毎年度、被保険者に対し、各日に係る保険料について、保険料の額納期限その他厚生労働省令で定める事項を通知します。

厚生労働大臣は、口座振替納付を希望する旨の申出があった場合は、その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが保険料の徴収上有利と認められるときに限り、その申出を承認することができます。(第92条の2)

前納はできるの?

将来の一定期間の保険料を前納できます。前納できる対象者は第1号被保険者(任意加入含む)で期間は6月又は年を単位として行うものとされており、6か月、1年、2年の前納が可能です。

前納された保険料について保険料納付済期間又は保険料4分の3免除期間、保険料半額免除期間若しくは保険料4分の1免除期間を計算する場合においては、前納に係る期間の各月が経過した際に、それぞれその月の保険料が納付されたものとみなします。

前納には控除があります。前納に係る期間の各月の保険料の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって計算した額が控除されます。お得になりますね。

付加保険料

国民年金の第1号被保険者は、厚生年金の被保険者と違い、1階部分の老齢基礎年金しか支給されません。そこで老齢年金を増やすために、第1号被保険者は付加保険料を納付することができます。ここの論点は過去頻繁に問われています。

条文を見てみよう

第87条の2

第1号被保険者法定免除申請全額免除学生納付特例又は保険料納付猶予制度の規定により保険料を納付することを要しないものとされている者、申請4分の3免除申請半額免除又は申請4分の1免除の規定によりその一部の額につき保険料を納付することを要しないものとされている者及び国民年金基金の加入員を除く。)は、厚生労働大臣に申し出て、その申出をした日の属する月以後の各月につき、前条第3項に定める額の保険料のほか、400円の保険料を納付する者となることができる。

 付加保険料の納付は、原則の保険料に定める額の保険料の納付が行われた月(追納の規定により保険料が納付されたものとみなされた月を除く。)又は産前産後期間の保険料免除の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係る期間の各月についてのみ行うことができる。

 付加保険料を納付する者となつたものは、いつでも厚生労働大臣に申し出て、その申出をした日の属する月前月以後の各月に係る保険料(既に納付されたもの及び前納されたもの国民年金基金の加入員となつた日の属する月以後の各月に係るものを除く。)を除く。)につき付加保険料を納付する者でなくなることができる。

 付加保険料を納付する者となつたものが、国民年金基金の加入員となつたときは、その加入員となつた日に、前項の申出をしたものとみなす。

第1号被保険者は、厚生労働大臣に申し出て、その申出をした日の属する月以後の各月につき原則の保険料にプラスして400円の保険料を納付することができます。カッコ書きの青文字も大切ですね。法定免除、申請全額免除、学生納付特例、保険料納付猶予制度、申請4分の3免除、申請半額免除、申請4分の1免除、国民年金基金の加入員は除かれていますので付加保険料を納付することはできません。原則の保険料を全額納付していることが条件になっています。なお、国民年金基金への加入は、付加年金と同じ老齢基礎年金の上乗せ的な制度ですので、どちらか一方となります。

2項

原則の保険料とセットでないと付加保険料を納付できません。また、産前産後期間の保険料免除されている期間は、納付をしたものとみなされる為、付加保険料を納付できます。カッコ書きの青文字の意味は、原則の保険料追納したら納付されたものとみなされますが、保険料の追納を行った月は、付加保険料を納付することはできないという意味です。

3項

付加保険料は、いつでも、厚生労働大臣に申し出て、その申出をした日の属する月前月以後の各月に係る保険料を納付しなくてもよくなります。保険料の納付は翌月末日です。申出をした日の属する月というのは前月の保険料を納付する月ですので、前月以後の各月に係る保険料を納付しなくてもよくなります。カッコ書きの青文字ですが、除くを除くと条文にありがちな複雑な書き方ですね。まず前納についてですが付加保険料も前納ができますが申し出て付加保険料を納付する者でなくなくなったとしても既に納付されたものや前納した分は還付されません。国民年金基金の加入員となつた日の属する月以後の各月に係るものを除くを除くですが、国民年金基金の加入員は付加保険料を納付できないので、国民年金基金の加入員になったときは、加入員になった日に付加保険料納付の辞退の申出をしたものとみなされます。除くを除くですから、国民年金基金の加入員となつた日の属する月以後前納していた分は還付されます。

4項

付加保険料を納付するものが、国民年金基金の加入員となったたときは、その加入員となった日に付加保険料を納付する者でなくなる申出をしたとみなされます。


農業者年金の被保険者は?

農業者年金制度は、農業従事者の公的年金制度として、「老後生活の安定・福祉の向上」を目的に発足しました。農業者年金基金法第17条に「農業者年金の被保険者のうち国民年金法第87条の2第1項の規定による保険料を納付することができる者は、すべて、農業者年金の被保険者となった時に、同項の規定による保険料を納付する者となる。」という規定があります。つまり第1号被保険者で農業者年金の被保険者は希望の有無にかかわらず、原則、付加保険料の納付義務があります。

第1号被保険者しか付加保険料は納付できないの?

任意加入被保険者は、第1号被保険者とみなして付加保険料を納付することができます。ただし、特例任意加入被保険者はNGです。特例任意加入被保険者は年金額を増やす目的ではなく、老齢基礎年金の受給権を得ることが目的でした。趣旨に反しますよね。

付加保険料を滞納したら?

以前は、付加保険料を納付する者となったものが、付加保険料を納期限(翌月末日)までに納付しなかったときは、その納期限の日に、付加保険料を納付する者でなくなる旨の申し出をしたものとみなされていました。保険料の徴収権の時効が2年ですので消滅時効していない過去2年分までは遡って納付が可能となりました。原則の保険料も納期限までに納付しなくても過去2年分までは遡って納付が可能ですから、あわせる形にしたんでしょうね。

  • 特例任意加入被保険者は付加保険料を納付できない
  • 産前産後期間の保険料免除者は付加保険料を納付できる
  • 国民年金基金の加入と付加保険料の納付は同時にできない
  • 農業者年金の被保険者は希望の有無にかかわらず付加保険料の納付義務あり

付加保険料を納付したものは、老齢基礎年金を受給する際に付加年金を受け取れます。
付加年金についてはこちら↓



それでは過去問いきましょう

問1. 厚生労働大臣は、被保険者から保険料の口座振替納付を希望する旨の申出があった場合には、その納付が確実と認められるときに限り、その申出を承認することができる。

過去問 令和5年 国民年金法

←正解はこちら
問1. ✕ これは、いじわるな問題ですね。法律の規定には「原則」と「例外」があります。問題文に「限り」と書いてあったら例外がないか考えましょう。この問題は例外ではなく条文が「かつ」で書かれており両方満たしす必要があります。以下条文です。

厚生労働大臣は、被保険者から、口座振替納付を希望する旨の申出があった場合には、その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが保険料の徴収上有利と認められるときに限り、その申出を承認することができる。

その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが保険料の徴収上有利と認められるときに限り承認することができます。

問2. 60歳から任意加入被保険者として保険料を口座振替で納付してきた65歳の者(昭和30年4月2日生まれ)は、65歳に達した日において、老齢基礎年金の受給資格要件を満たしていない場合、65歳に達した日に特例による任意加入被保険者の加入申出があったものとみなされ、引き続き保険料を口座振替で納付することができ、付加保険料についても申出をし、口座振替で納付することができる。

過去問 令和2年 国民年金法

←正解はこちら
問2. ✕ 特例任意加入は昭和40年4月1日以前生まれで老齢の年金の受給権を有していない人が加入できる制度でした。設問の人は60歳から任意加入しており65歳に達した日において老齢基礎年金の受給資格要件を満たしていない場合は、65歳に達した日に特例による任意加入被保険者の加入申出があったものとみなされて引き続き保険料を口座振替で納付することができます。後段部分の付加保険料は納付することはできません。65歳に達するまでの任意加入被保険者は付加保険料を納付できますが特例任意加入被保険者は「受給権を有する」ことが目的の特例です。増やす目的の付加保険料は納付できません。

問3. 国民年金の保険料における保険料改定率は、平成18年度以降、毎年度、当該年度の前年度の保険料改定率に名目手取り賃金変動率を乗じて得た率を基準として改定され、政令で定めることとされている。

過去問 平成19年 国民年金法

←正解はこちら
問3. ✕ 保険料改定率は、前年度の保険料改定率に「名目賃金変動率」を乗じます。名目手取り賃金変動率ではありません。名目手取り賃金変動率は、新規裁定者の年金額の改定率に使う指標となります。

問4. 平成31年4月分から令和2年3月分まで付加保険料を前納していた者が、令和元年8月に国民年金基金の加入員となった場合は、その加入員となった日に付加保険料を納付する者でなくなる申出をしたとみなされるため、令和元年7月分以後の各月に係る付加保険料を納付する者でなくなり、請求により同年7月分以後の前納した付加保険料が還付される

過去問 令和元年 国民年金法

←正解はこちら
問4. ✕ 令和元年7月分以後ではなく令和元年8月以後の各月に係る付加保険料を納付する者でなくなります。付加保険料を納付する者が国民年金基金の加入員となった時は、その加入員となった日に付加保険料を納付する者でなくなる申出をしたとみなされます。また、付加保険料を納付する者となったものは、いつでも、厚生労働大臣に申し出て、その申出をした日の属する月の前月以後の各月に係る保険料(既に納付されたもの及び前納されたもの(国民年金基金の加入員となつた日の属する月以後の各月に係るものを除く。)を除く。)につき付加保険料を納付する者でなくなることができる。としています。カッコ書きの「既に納付されたもの及び前納されたもの(国民年金基金の加入員となった日の属する月以後の各月に係るものを除く。)を除く。」を読み解くと既に納付されたもの前納されたものは除くですから、7月分は納付済です。さらに国民年金基金の加入員となった日の属する月以後の各月に係るものを除くと「除くを除く」ですから8月分以後の分は納付できないので還付されます。

問5. 付加保険料については、任意に申出を行い納付するものであるため、納期限までにその保険料を納付しなかった場合は、その納期限の日に付加保険料の納付を辞退したものとみなされる。

過去問 平成26年 国民年金法

←正解はこちら
問5. ✕ 以前は、付加保険料を納付する者となったものが、付加保険料を納期限(翌月末日)までに納付しなかったときは、その納期限の日に、付加保険料を納付する者でなくなる旨の申し出をしたものとみなされていました。保険料の徴収権の時効が2年ですので消滅時効していない過去2年分までは遡って納付が可能となりました。


令和6年度の保険料改定率(0.999)と16,980 円は、覚えていたほうが無難です。保険料改定率の仕組みを理解し年金額の改定率との違い、マクロ経済スライドの流れは一通り趣旨と計算方法等、事例に対応した勉強が必要かと思います。複雑ですが年金制度を大まかに理解すると勉強がスムーズになると思いますので厚労省のホームページを一読するのをお勧めします。

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