過去問対策(賞与の差引支給額)
給与計算実務能力検定試験には過去問集が市販されていませんので、問題対策がしづらいですよね。ここでは計算問題の「賞与」の差引支給額について解き方を解説していきます。前月の社会保険料控除後の給与等の金額(課税対象額)が記されているパターンと前月の給与が無く課税対象額が0円のパターンの2パターンがあります。今回は、課税対象額が記されているパターンです。
資料は試験当日に配布される
以下の一定の資料が問題用紙と共に配布されます。
・健康保険・厚生年金保険の保険料額表
・給与所得の源泉徴収額表(月額表)
・賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表
・雇用保険料率表
・退職所得控除額の計算の表
・生命保険料の控除額の計算式
・地震保険料の控除額の計算式
・配偶者控除等の種類と控除額
・年末調整等のための速算表等・・・・
資料をもとに、問題を解いていきます。
差引支給額を求めよ
次の条件で、令和5年7月10日に支給する賞与の差引支給額を求めよ
- 賞与金額:1,639,280円
- 前月の社会保険料控除後の給与等の金額(課税対象額):560,582円
- 税区分:甲欄
- 控除対象扶養親族等の数:1人
- 本人の年齢:42歳
従業員負担分の保険料率:協会けんぽ 東京都
健康保険:50.00/1000(100.00/1000×1/2)
介護保険:9.10/1000(18.20/1000×1/2)
厚生年金保険:91.50/1000(183.00/1000×1/2)
雇用保険:一般の事業 - 賞与支給は7月のみ年1回
雇用保険料率表(令和5年4月~令和6年3月)
賞与に対する源泉徴収額の算出率の表(令和5年分)
賞与計算の基本
賞与とは名称を問わず労働の対象として支払うもので、年間支給3回以下のものはすべて標準賞与額としてあつかいます。
- 賞与から控除するものは、社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金)、雇用保険料、所得税です。住民税は控除しません。
- 標準賞与額を決定します。具体的には賞与額の1,000未満の端数を切り捨てた額を標準賞与額といいます。
- 所得税の計算をするには前月の給与の課税対象額を把握する必要があります。これを「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」にあてはめた税率を使います。
健康保険には年度の累計額で上限573万円、厚生年金には1か月当たりで上限150万円と上限があり、それ以上は保険料はかかりません。
社会保険料を求める
健康保険料・介護保険料
賞与支給は7月のみ年1回と条件に書いてありますので、上限573万円を気にしなくてよいですね。1,000未満の端数を切り捨てた1,639,000円が標準賞与額となります。
問題文に率は記載されていますので条件にあてはめます。
健康保険:50.00/1000(100.00/1000×1/2)
健康保険料:1,639,000円×50/1000=81,950円
42歳なので介護保険料も算出します。
介護保険:9.10/1000(18.20/1000×1/2)
介護保険料:1,639,000円×9.1/1000=14,915円 ※50銭超切上げ
厚生年金保険料
厚生年金保険の標準賞与額には、月150万円の上限がありました。
問題文に率は記載されていますので条件にあてはめます。
厚生年金保険:91.50/1000(183.00/1000×1/2)
厚生年金保険料:1,500,000円×91.50/1000=137,250円
雇用保険料
雇用保険料は、総額にかかります。標準賞与額はつかいません。
一般の事業と条件に記されていますので6/1000を使います。
雇用保険料:1,639,280円×6/1000=9,836円 ※50銭超切上げ
社会保険料合計
81,950円+14,915円+137,250円+9,836円=243,951円
課税対象額
1,639,280円-243,951円=1,395,329円
所得税
所得税は前月の給与の課税対象額(560,582円)を賞与に対する源泉徴収額の算出率の表に当てはめて税率を求めます。扶養親族等が1人います。
賞与に対する源泉徴収額の算出率の表(令和5年分)
税率は18.378%ですね。賞与の課税対象額1,395,329円にかけます。
1,395,329円×18.378%=256,433.56362 ※1円未満切り捨て
所得税は1円未満切り捨てなので注意して下さい!
所得税は256,433円となり控除額合計は
243,951円(社会保険料合計)+256,433円(所得税)=500,384円
差引支給額は
1,639,280円(総支給額)-500,384円(控除額合計)=1,138,896円
お疲れさまでした。次回は前月の給与が無く課税対象額が0円のパターンであいましょう。
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