【国民年金法】20歳前傷病

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20歳前傷病による障害基礎年金

国民年金の第1号被保険者は日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者です。20歳前傷病による障害基礎年金は、被保険者ではない20歳前に発生した傷病による障害により、20歳以後も障害等級に該当する状態である場合に支給されます。

障害基礎年金は原則、初診日において被保険者要件を満たし初診日の前日において保険料納付要件を満たしていなければいけません。20歳未満だと国民年金の第1号被保険者にはなりえませんので障害基礎年金は受けることは出来ませんが、福祉的な観点から保険料を納めていない20歳未満の人にも支給しようという制度が20歳前傷病による障害基礎年金です。保険料を納めていない人への福祉的な年金なので支給停止となる事由も多く存在します。

条文を見てみよう

第30条の4(20歳前傷病)

 疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であつた者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは、その者に障害基礎年金を支給する。

条文を読むと2つのパターンがあることがわかります。

  1. 初診日が20歳未満で、障害認定日も20歳未満の場合は20歳に達した日
  2. 初診日が20歳未満で、障害認定日が20歳に達した日後の場合は障害認定日

において障害等級に該当していれば障害基礎年金の受給権が発生します。

20歳前に第2号被保険者だった場合

20歳前傷病による障害基礎年金は初診日に被保険者でないことが要件のひとつです。例えば18歳で会社に勤めると第2号被保険者となりますので、第2号被保険者期間中に初診日のある傷病については本来支給の障害基礎年金が支給されます。

事後重症による20歳前傷病

初診日において20歳未満であった者が障害認定日において障害等級に該当せず、その後、悪化して障害等級に該当したら事後重症という制度があります。

条文を見てみよう

第30条の4 2項(事後重症による20歳前傷病)

 疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者(同日において被保険者でなかった者に限る)が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日後において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日後において、その傷病により、65歳に達する日の前日までの間に、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に前項の障害基礎年金の支給を請求することができる。

障害認定日において障害等級(1級2級)に該当しなかった場合でも、65歳に達する日の前日までに障害の状態が悪化し1級2級に該当するに至った場合は事後重症による請求ができます。
「その請求をした者に同項の障害基礎年金を支給する」と3項に規定されていますので、請求をしたら受給権が発生します。支給が開始されるのは請求のあった月の翌月からです。

繰上げ支給の老齢年金を請求したら?

繰上げ支給(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の受給権者になったら65歳に到達したものとみなされて20歳前傷病に基づく障害基礎年金の請求はできません。

支給停止

本来支給の老齢障害年金は所得により支給停止にはなりませんが、20歳前傷病による障害基礎年金は福祉的な要素が強く、所得に応じて支給が停止される場合があります。

条文を見てみよう

第36条の3(支給停止)

 20歳前傷病による障害基礎年金は、受給権者の前年の所得が、その者の所得税法に規定する同一生計配偶者及び扶養親族(以下「扶養親族等」という。)の有無及び数に応じて、政令で定める額を超えるときは、その年の10月から翌年の9月まで、政令で定めるところにより、その全部又は2分の1(第33条の2第1項の規定により子の加算額が加算された障害基礎年金にあつては、その額から同項の規定により加算する額を控除した額の2分の1)に相当する部分の支給を停止する。


  • 20歳前傷病による障害基礎年金には所得による支給停止がある
  • 所得は受給権者だけで判定する
  • 支給停止は、その年の10月から翌年の9月まで
  • 支給停止されるのは全部2分の1

所得状況を把握するために、20歳前傷病による障害基礎年金の受給権者は日本年金機構所得状況届を提出しなければいけません。

指定日:9月30日(指定日前1か月以内に作成)

その他の支給停止

20歳前傷病による障害基礎年金だけ支給停止される事由がほかにもあります。

  • 恩給法に基づく年金給付、労働者災害補償保険法の規定による年金給付など政令で定める年金給付を受けることができるとき
  • 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき
  • 少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき
  • 日本国内に住所を有しないとき

労働者災害補償保険法の障害補償年金が全額停止されている場合は停止されません
未決拘留者は停止されません
※障害者福祉施設に入所しても停止されません
※所得停止は震災等で全財産1/2以上が被災した者にはされません


これらの支給停止事由や所得制限20歳前傷病による障害基礎年金だけの規定です。本来支給の障害基礎年金には、このような支給停止はありませんので注意して下さい。


それでは過去問いきましょう

問1. 20歳前傷病による障害基礎年金は、受給権者が刑事施設等に収容されている場合、その該当する期間は、その支給が停止されるが、判決の確定していない未決勾留中の者についても、刑事施設等に収容されている間は、その支給が停止される。

過去問 令和5年 国民年金法

問2. 20歳前傷病による障害基礎年金を受給中である者が、労災保険法の規定による年金たる給付を受給できる(その全額につき支給を停止されていないものとする。)場合、その該当する期間、当該20歳前傷病による障害基礎年金は支給を停止する。

過去問 令和5年 国民年金法

問3. 20歳前傷病による障害基礎年金は、その受給権者が日本国籍を有しなくなったときは、その支給が停止される。

過去問 平成28年 国民年金法

問4. 国民年金法第30条の4の規定による障害基礎年金の受給権者は、毎年、受給権者の誕生日の属する月の末日までに、当該末日前1月以内に作成された障害基礎年金所得状況届等、国民年金法施行規則第31条第2項第12号ロからニまで及び同条第3項各号に掲げる書類を日本年金機構に提出しなければならない。ただし、当該障害基礎年金の額の全部が支給停止されている場合又は前年の所得に関する当該書類が提出されているときは、当該書類を提出する必要はない。

過去問 令和4年 国民年金法


解答
問1. ✕ 20歳前傷病による障害基礎年金は、受給権者が刑事施設等に収容されている場合は、その間支給が停止されますが、判決の確定していない未決勾留中の者が刑事施設等に収容されている間は停止されません。

問2. 〇 20歳前傷病による障害基礎年金は、労働者災害補償保険法の規定による年金給付などを受けると支給停止されます。なお本来支給の障害基礎年金と労災保険法の障害(保障)等年金が支給されるときは、本来支給の障害基礎年金が全額支給され労災保険側で調整が行われます。

問3. ✕ 受給権者が日本国籍を有しなくなっても停止されません。停止されるのは日本国内に住所を有しなくなったときです。

問4. ✕ 提出期限は、受給権者の誕生日の属する月の末日までにではなく9月30日までにです。後段部分は正しいです。問題文に条文番号しか書いておらず、この障害基礎年金は「20歳前傷病」と判断しないといけませんが、所得状況届は20歳前傷病しか課されていないので、ここで判断できた人もいるかもしれません。通常の障害基礎年金の障害状態確認届(指定日前3月以内に作成)は、厚生労働大臣が指定した年の誕生日が属する月の末日です。

20歳前傷病による障害基礎年金についても子の加算はありますし本来支給の障害基礎年金と同じ規定も多いですが、保険料を納めていない人に支給する福祉的な年金ですので支給停止に大きな違いがあります。20歳前傷病による障害基礎年金は昭和61年4月に新法が施行された際に障害福祉年金から裁定替えされた制度で法30条の4に規定されています。試験に於いて条文番号は覚える必要はないのですが法30条の4は覚えた方がいいでしょう。上記、過去問の問4のように条文番号だけで20歳前傷病と判断させる問題が出題されています。

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